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Act.2-02

「そういえば課長」  落ち着きがなくなっている椎名課長のため、私から話題転換した。 「食後にアフォガードを、って注文してましたけど、課長、甘いもの食べるんですか?」  椎名課長の目尻がピクリと痙攣した。 「――それは、男は甘いもんを食うな、ってことか?」 「そんなこと一言も言ってないじゃないですか……」  不貞腐れた態度の椎名課長に、思わず深い溜め息が漏れる。 「ただ、ちょっと意外だと思っただけです。今まで課長が甘いものを食べてるトコを見たことないですし」 「――軽蔑するか……?」 「なんでですか?」 「――男が、甘いもん好きだとか……」 「だから、誰もそこまで言ってませんって!」  あまりにもウジウジしているから、つい、強い口調になってしまった。 「男とか女とか関係ないです。課長のように甘いものが好きな男性だっていますし、辛いものが好きで甘いものが嫌いな女性だっています。そんなのをいちいち気にする方がどうかしてますよ」 「――正論だ……」  私のドン引きレベルな熱弁に、椎名課長は素直に頷いてくれた。 「すまなかった。藤森はそんなことぐらいで他人を軽蔑するようなことはしないと分かってたはずなのに、つい……」 「いえ、私もムキになってしまってすみません……」  ふたりで同時に頭を下げ、それから顔を合わせたとたん、どちらからともなく噴き出してしまった。 「でも、また意外な一面が知れて良かった」 「甘いもの好きってトコがか?」 「ですね」 「そこは素直に受け止めよう」 「ありがとうございます」  そんな会話を交わしている間に、ワインと料理が次々に運ばれてきた。  テーブルいっぱいに並んだ料理は圧巻だ。  全部ふたりで食べられるのだろうかと、不意に不安になった。 「――食べきれるかな……?」  怖気付ている私とは対照的に、椎名課長は、「大丈夫だ」と強気だ。 「藤森が食えない分は俺が食ってやる。これぐらいたいしたことない。任せとけ」 「頼もしいですね」  持ち上げてみれば、「だろ?」とちょっと得意げに状態を反らせた。 「まず、藤森は無理するな。でも、遠慮もするなよ?」 「はい」  私は口元を綻ばせ、フォークを手に取る。  デザートのアフォガードのことを考えて、食べ過ぎないように気を付けないといけない。
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