12 / 26

子猫たちをゲージに入れる理由

 お湯をいただき、リビングへ戻ると子猫たちの姿がなかった。彼女達がいない風景に物足りなさを感じてしまい、無意識のうちに部屋を見渡した。 「彼女たちはゲージのなかでぐっすり眠ってますよ」  突然龍之介さんの声がして、ちょっとだけ驚いた。そちらを見ると、黒いTシャツ姿の彼が私を眺めている。ペットボトルの水を飲んでいたのか、それを握りしめたまま近づいてきた。条件反射のように手でパジャマ姿を隠したら、それに気づいたのか近づきながら苦笑した。 「急には襲いません」  そう言ったあと、腰にさりげなく手を添えられた。決して強引ではないが、それとなく前に進むよう促され、行き着いた部屋は寝室だった。寝室はグレーとベージュが混ざり合った色あいでまとめられている。リビングはフローリングなのに、この部屋にはふかふかのカーペットが敷かれていて、足裏からその感触が伝ってくる。柔らかい花の匂いがするこの部屋で、彼と何度も抱き合っているというのに、入るたび恥ずかしくなってしまう。忙しなく脈打つ鼓動を全身に感じながらベッドの側へ行くと、彼が立ち止まった。  彼を見上げると、優しい笑みを向けられた。そしてそのまま彼がキスしようとしてか顔を近づけてくる。私を見つめる瞳がゆっくりと閉じ始め、それに合わせて目を閉じた。彼の息が唇にかかる。息を止めてそのときを待っていると、柔らかな唇が重ねられた。  薄い皮膚をなぞるように、彼の唇が触れる。そしてやわやわと食まれ、それを真似て応えると、ぎゅっと抱きしめられた。自然に体から力が抜けてしまい、抱きしめられたままベッドの端に腰掛けた。するとゆっくりと押し倒されてしまい、口付けがより深くなる。  唇のあわせに濡れた舌が触れた。そして唇を開くと同時に、様子を見るようにゆっくりと差し込まれた。それを出迎えるように舌を伸ばすと、彼が急に唇を押しつけてきた。 「ん……」  とっさに彼の体をおしやろうとしたけれど、熱を発する男の体はびくともしない。その熱に呼応するように体の内側が熱くなり、頭がぼうっとなってくる。私の口のなかでは、肉厚な舌がぴちゃぴちゃと音を立てながら私の舌を責め立てていた。  濡れた粘膜同士が擦れ合うさまは、セックスを思わせる。そう思ったらどんどん思考が溶けていき、無意識のうちに鼻にかかった声を漏らしていた。およそ自分の物とは思えぬほど甘やかな声に、恥ずかしくて泣きたくなってしまう。  やがて私を抱きしめていた手が、腰のラインをたどりながら下りていく。そして布越しに腿をゆっくりと撫ではじめた。ひとしきり続いた口付けが終わりを告げ、彼の唇がゆっくりと離れていく。唾液ですっかり濡れた唇にかかる息は、切羽詰まったものになっていた。 「麻音子……」  掠れた声でそうつぶやいたあと、彼は私の耳に弾力のある唇を押しつけてきた。そのときそこからびりびりと電流にも似た痺れが走り、思わず肩を竦ませただけでなく、声を漏らしてしまっていた。 「あ……っ」  すかさず濡れた舌が耳の皮膚に這わされた。一度漏れてしまった声はもう歯止めがきかず、それからというもの呼吸をするように自然と出てしまう。ぬるりとした粘膜が快感と羞恥を引き出そうとするかのように動き回り、そのせいでなけなしの理性が崩れていった。  彼の愛撫は快感だけでなく罪悪感をも肌に刻んでいく。好きな人に触れられることは嬉しいのに、その相手の気持ちが分からないと不安になる。そしてたちが悪いことにその不安から逃れたくて相手を強く求めてしまうし、それは悪循環何物でもない。  明日こそちゃんと話そう。あれは計画的な婚約破棄だったのだと。  そのあと聞こう。私のことをどう思っているのかを。  そして告げよう。同情から派生した好意ならば今すぐ捨ててほしいと。  そう決心したとき、胸の頂に熱い物が触れた。耳をなぶっていた唇は、いつの間にか胸にたどり着いていて、しかもパジャマをまくり上げられていた。彼は乳房を柔らかく揉みながら、反対側の乳房の先端に吸い付いている。堅い舌先で立ち上がったところを突かれ転がされ、その上強い力で吸い付かれてしまえば、湧き上がる快感に飲み込まれ喘がされてしまう。そしてせっかくの決心がグズグズと溶けて、跡形もなくなってしまうのだ。  この三ヶ月同じ事の繰り返し。彼に抱かれるたびに心が振り子のように揺れ動く。そんな自分が浅ましい女に思えてしまい、彼に貫かれながら泣いていた。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!