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蜜夜

「やだ……。そこ……」  鼻に掛かった声で訴えても、無駄だということくらい十分分かっている。  でも自然と漏れてしまうのだから、こればかりはもうどうしようもない。  それを私以上に知っている婚約者は、するするとその場所を目指していた。  噴き出した汗のせいでしっとり濡れた肌に彼の荒い息がかかるたび、淫らな期待がどんどん膨らんでいく。 「嫌ならやめようか?」  彼が動きを止めて上目遣いに私を見る。まっすぐ向けられた目を見ると、ふだんのものとは違っていた。  乱れた髪の合間から覗く目が、獲物をいたぶる獣のようなものになっている。  意地悪だ。でもその目に見つめられるのは嫌じゃない。むしろ興奮さえ覚えていた。その証拠に向けられる目を見つめ返すと、それだけで体の芯が熱を帯びてくる。そしてその熱は体内で膨れ上がり、ついには息苦しくなってきた。 「駄目だよ、そんな目しても」  溜まった熱を吐き出すと、私を見つめる目が満足そうに細まった。こんな表情をした後、彼は必ずとどめをさしてくる。指と唇で高みに上り詰めさせられて、たちまちのうちに絶頂に押し上げられてしまうのだ。 「もっと意地悪したくなる。そんな目を向けられたら」  ふだんは優しい男が、その本性を現した。体をずらし、臍のすぐ下に唇を押し付けてくる。 「あ……っ」  柔らかいものがそこに触れたとき、じんと痺れが走り肌の下へと熱とともに染みこんでいく。 「待ちきれないみたいだね。麻音子はいやらしい女だ、本当に」  彼が話す度に肌に息が掛かる。それがどんどん降りてきて、ついに茂みに掛かった。 「俺だけが知っていればいい。こんな姿は」  さわさわと感触を確かめるように触れられて、そこに意識が向かっていく。  どんどん期待が高まり心臓がどくどくと忙しなく脈打ってくる。そのせいで痛みさえ感じた。 「麻音子だって、俺にしか見られたくないだろ?」  低く艶めいた声が聞こえてきた直後、無意識のうちにシーツをぎゅっと握りしめていた。
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