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混線したトモダチ ⑧

 それは音がどこかに行ってしまったような、静かな中で起きた事だった。 いつもの時間のバスは行ってしまい、夕日の中から迎えにやって来るバスに乗る時間。 夕日が一杯に照り付けているオレンジ色の校舎から出て、一番最初に風を感じた。 みんな無言のままだった 今日一日の縛り付けからの解放をやっと許され、カラダ中に巻き付いた紐を解いてくれるような気持ちのいい風。 風の中には薄っすら季節の移りを感じ取れた。  遠くから聴こえて来る誰かの声、ホイッスル、楽器… 全部私たちのもの…… けれど私の影法師だけ仲間ハズレ… そんな誰にでも分かるような事をいつも心の中に置いてるわけじゃない。 みんなそれぞれ内側に何かを持っている。 みんな一緒にいながら考えてる事はみんなそれぞれ。 仲良しだからって、それを全部打ち明ける必要はない。 けれど覚えていて忘れないで みんな大切なトモダチ 守りたい大事な事は口に出さなくても、いつも思っているよ いつもだよ…… 胸の中にも通り抜けて行くような、心地よい緩く穏やかな風が流れ 木々の葉も揺らす サラサラ聴こえて来る自然の音楽 その景色と彼は一緒になっていた 「 藤井… 」 「ん?…… ・・・!!   ・・・・・ 」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 夕焼け雲が薄っすらと掠れたように青空と混ざり合ってる景色の中 ふたりが唇を合わせたのを  見た 驚いたのはほんの一瞬 とても静かでとてもきれいで 私は思わず見惚れてしまったの 「藤井…  オマエに”オレのも”渡したから……」 「え?………」 「じゃあ、また明日!」  ナナオくんはいつもの笑顔で手を振り オータくんはミズキの肩を”トントン”と軽く叩いて、そして私には少し申し訳なさそうな笑顔を見せてそのままナナオくんと行ってしまった。 「…… うん……  また… 明日ね……」 ミズキが今の出来事に整理の付かないまま、抑揚なく言った  遠くに広がる青とオレンジ色の景色に向かって、並んで歩く彼らの後ろ姿を見ていたら 私たちが乗るバスが来たのが見えて また 明日ね… って  明日もまた会おうね……って… 混線したトモダチ(序)   終
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