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混線したトモダチ ③

 すっかり乾いたキミの髪の毛が夕方の風に乗ってゆっくり揺らいでいた。 何の音もない キミは笑っているけれど、その声はオレの耳までは届かない。 夕空を掴むように両腕を伸ばし、空を仰ぐように胸を広げたキミを誰にも気付かれないように見ていた。 隣にいる彼と自分のクラスの出来事でも話ているのだろうか… 重たいカバンの一日が終わって、開放感一杯でふたりで笑い合う。 彼女の髪の毛が夕日に透けて風に揺れてとてもキレイ…… 彼らもオレに気付かない  そして…  また明日ね……    心の中で言った  朝のあの土砂降りがウソだったかのように、帰りは澄んだ青空が広がっている。 そこかしこに出来ている水たまりは、真上にある青空を映していた。 後ろを振り返っていた  無意識に  彼らが行ってしまった… 何でもない、自分が見たかったものは別にない  いつもの見慣れた景色  オレが見たかったものって……???  それをはっきりさせる勇気がなかった 「虹生…」 「ん…」 オレはいつも通りにするだけ オレが違う事をすると、それは途端に周りを狂わせてしまう事になる……  オレは別にオトコじゃないと駄目なわけじゃない  今こんな事を考える自分はズルイ……   ”トモダチ”の旺汰にも言えない 自分の中にある”コレ”が 重くて 重くて 今、引き上げて自分から出す事が出来ない。 どうしてこんなに重くなってしまったんだろう……  ずっと一緒にいたかった 彼とは小さな頃から一緒 彼と離れる事なんて考えられなくて、どこかに彼が行ってしまい自分の知らない彼が出来てしまう事が怖かった。 彼しか見ていない 彼がいて、自分があった  そのくらい彼の存在は自分に大きい…… 彼はオレに手を伸ばしていた  オレは彼と一緒にいたいと思った  ゥ………。……  虹……  ナ……  ……旺…………………  なんか…  違う事考えてない? …………… 付き合いの長い彼にはすぐに見抜かれる  どうしても考えてしまう  好きなの?  好き…   だけど……   それがどういう”好き”なのかはっきりさせるのが怖い  ……  俺の事は?  愛してるよオマエはすごく大事  その気持ちは変わらない……  なのに… どうしてだろう……  考えると苦しくなる…   初めてだ…  こんな…… 俺はお前の事愛してるよ…  それだけは忘れないで…… 「あれ? ミズキは?」 「トイレにでも行ったんじゃないかな」 10分休みの時に彼女が藤井を訪ね教室のドアの所に姿を見せた 「これ、ミズキのノートなの この前ウチに来た時私、自分のと間違ったみたいで…」 「キミたち似たようなの使ってるからね… いいよ渡しておくから」 「ごめんね ありがとナナオくん そしたらね……」  彼女がフッと向きを変えた時に自分の歯車が狂ったような感覚になった。 ゆっくりと流れ浮いた長い髪の毛からフワリと感じた彼女の香りに、一面の色とりどりの花畑の中に自分が立っているような錯覚に眩暈を起こし掛けた。 フワフワになった足元に堪らずドアにもたれ、そのまま彼女の後姿を目で追っていた。  それは特定の者だけに彼女が無自覚にもたらす作用だとはにわかに信じられなかった事。 それを必死に教えていた彼の事も、オレは信じていなかったと今になって分かった。  扉を開けて出て来た彼と会う事が出来た彼女はその場で彼と立ち話を始め、オレの方をチラッと見て目が合うと笑った。 彼女は誰にでも理由もなく笑ったりはしない。 彼女の”トクベツ”はオレにはない。……………
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