156 / 158

エッちゃんBAKUDAN ⑤ 

 俺の腕を掴む虹生の手が、必死に呼び掛けて来る…… こんなに苦しくなるほどに、俺を求めて来る彼は初めてだ……… ああ俺だって出来るものならそうしたい…… 俺も今、必死で己と戦っているんだ。 見ろ、この手を ムズつく手を爪が刺さるほど抑えているんだ。 やはりあの時、耳を塞いでおくべきだったのか…… 時すでに遅し…… そうだ、虹生 思い切ってこうしてみたらどうだ…  例えば 熱いキ… 「ァ…… ハァ…  エッ… ちゃ……」 「 !? 」 虹生?……… う…  ふ…… んっ  はぁっ…… ドキンドキンドキンドキンドキンドキンドキンドキン……  ダ…ダメだーーーッッ!! フッ… フジイーーーーーッッッ!! 早く、 ハ ヤ ク 帰って来てクレーーーーーッッッ!!! 「お待たせ! エッちゃん!」 『藤井~~~…』 「?…」  俺たちはやっと、この危険な状況から脱出する事が出来た。 こんな机の上から一ミリも動かない彼女に、スッカリ俺たちは搔き乱されていた。 何というパワーだ… 恐ろしい…… 危うく魂どころか、ハートまでも奪われてしまう所だった…… ハー……スゴイ威力だ…… 今までこんな事に遭遇した事なんてない! 初めての体験だ。 少し… 落ち着かなくては……  思い掛けない、大変な任務だった。 あと、数分でも彼の到着が遅れていたらと思うと、背筋とアソコがムズッとして来る。 こんな所でこのような現象は、正しく地獄にいるような気分だ。  もしもまたこのような事があるのだとしたら、もっと別な方法を藤井に提案しよう。 例えば 下校を速やかに行い(藤井を放って)、俺の家でゆっくり彼女に休んでもらう。 俺の部屋で存分にくつろいで欲しい・・・ 良い考えだとは思わないか?ナア~ァ 虹生……  虹生は先ほどと比べ、随分落ち着いたように見えた。 頬を赤らめ、彼女のリュックをしっかり抱きしめながら、藤井とエッちゃんの事を虚ろな目で見ている。  ……大丈夫か?お前…… に しても、気になるのは 彼はなぜアンナ時に彼女の名前を……  これをどう捉えて良いのやら…… ウ~~ム……  彼は 虹生は、この得体の知れないものに、トリツカレテしまったのだろうか…… 俺もあの月琴湖では見えないモノにミルミル引き寄せられて行く、不思議現象に戸惑ったりしたが…… それでも俺はこの通り、今の出来事のように不意打ち食らって乱れる事はあっても、通常の状態に戻る事が出来る。 時間が経てば、彼もきっと元に戻る事が出来るだろう……  藤井は教室に戻るなり俺たちには脇目もふらず、彼女の介抱に余念がない様子。 その表情は藤井には珍しく真剣で、惜しまない自愛の眼差しを彼女に注いでいる。 そして時々声を掛けながら……  エッちゃん… 大丈夫?  エッちゃん…  エッちゃん……  何度も何度も彼女の名を呼ぶ  俺は思わずその光景に涙が出そうになった。 彼女のお腹に手を当てながら 彼女の髪を撫ぜながら…… ふたりが主演の”学園ラブストーリー”に、胸が熱くなった。 藤井のスゴさをまた知った。 彼女と渡り合える彼もまた、類まれな人物なのだ。  しかしながら、先ほどの熱く猛った余韻は今なお消えず、しっかりと刻まれたまま。 帰宅後虹生と共にその対処、そして、これにて終了というカタチにしたいと考えている。 「エッちゃん 大丈夫? そろそろ行くよ…歩けるかい?」 『 !!! 』  学園ラブストーリーのエンドロール中に、まさかの展開が起きた。 やはりこのふたりが主役のストーリーはタダモノではない。 なんとエッちゃんは俺と藤井を間違えたのか、彼の隣にいた俺に腕を巻き付けて来た。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!