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”マジック”を侮るナ! ⑧

 しつこい藤井の元から逃げるようにオレたちの所に彼女がやって来て、藤井に向かってまた叫んだ。 ……ここに来た時と同じじゃないか… 彼女はさっきの出来事を何も気にしてないように、オレのそばに来てくれた。 オレの胸がまた騒がしくなって来た。…… 「エッちゃん 君たちの普段っていつもこんなカンジなのかい? 君の苦労が伺えるよかわいそうに…… 今日は、とってもスケベな藤井から俺たちが君を守ってあげるから、安心して? 藤井ィ! お前は少し、自重しろォ!!」  そう言った旺汰の顔は、オレでも見た事がないような光り輝く表情をしている。 それは、オレとオマエの間に彼女がいて、ピッタリと腕を組みくっ付いているせいだと 思う……。 心臓がまたバカみたいに鳴って来た…… 旺汰… オマエも彼女に何か感じているのか? 「ヒドイよエッちゃん!」 「ヒドイのはミズキの方でしょーーっ!」 「かわいそうにエッちゃん ずっとここにいていいんだからね… ハハ… ドウダ藤井のスケベーーッ」 「……クソウ… オータくん…」  オレたちは藤井の”エッチ”な手癖のお陰で、大変な幸運に恵まれたが、それは残念な事に長くは続かなかった。笑顔一杯の旺汰と相反して打ちひしがれてシナビタような彼の元に、彼女はその間もなくに戻ってしまったからだ。 「あ・ アアアアアアアア~~~……・・・」  普段、彼はこんな事で声を上げたりはしない。 よほど残念に思ったのか、それとも彼の内側のヒモが緩んでた……って事だ。 黙って見ていたオレと目が合い、バツが悪そうに彼はパッと向こうを向いた。 オレも 彼女が隣にいたままだったらな……  そう思ったよ旺汰…… 「ふう…」 「どうした?」 「いや…  なんでも……」 「疲れた? いやにおとなしいな」 「……そう? 何でもないよ……」 うん…   何でもない…… さあ、次は”イモ菓子を食う”だ……  オレたちは移動を始め、また後ろから彼らの事を見て歩いた。 キミは藤井の耳に向かって、何か笑いながら話をしている。 自分の声が周りの喧騒に掻き消されてしまわないようにと、キミは頭を斜めに傾け、藤井は彼女に自分の耳を近付ける。 昔のキミたちだったら、きっとそんな事しなくても、もっと距離が近かったんだろうね…… 自分たちの左手を繋ぐのは、やっぱりキミたちのスタイル? 藤井の挙動がまた怪しくなって来たぞ…… 彼女の頭をゆっくり撫ぜ始めた…… ゆっくり… ゆっくり…… 『 アッ 』  背伸びまでして一生懸命自分に話をしている彼女に、藤井は瞬きしてる間に終わってしまいそうなキスをした。  そんな一瞬のキスでもその勢いは、彼女の体勢をグラリとさせてしまう。 でも藤井はそれも分かっていたように、すぐに彼女を支える。 彼女の扱いがメチャクチャなようで、分かってるようだ…… いや… やっぱり乱暴だよ…… それは ふたりが一緒にいた年月で許せてるって事なのかな…… 「エッちゃんの事が”かわいい”って言うのは、時間も場所もまるでナシにしてしまうんだね…」 「……”藤井だから”… だろ……多分」  今のキス模様を見た後、一緒に声を上げてしまった旺汰に言った。 ”藤井だから”?  オレは”エッちゃんだから” そう思うな……  彼女は今の出来事に慌て乱れて、藤井のお腹を押す動作をしたが、彼女がまた自分から逃げ出す隙も作らせない速さで、藤井は彼女の腰を抱いた。 今度は藤井が後ろのオレたちを振り返り見て、おどけた顔で笑って見せた。  何かとぶつかりそうになる混雑した通りを歩く時は、彼らのカラダが隙間のないほどにピッタリとくっ付き、障害になる物を一緒に避ける。 彼女は藤井のカラダに腕を回し、目を瞑っていても歩けるほど甘えるように自分を彼に預けている。  彼女はまたオレたちの事を振り返って見た。 そして 藤井のカラダに自分のホッペをくっ付けながら、ニッコリと笑った。 「エッちゃん! 藤井のスケベがうっとうしくなったら、いつでもコッチおいでよ」 旺汰が言った 「オータくん、そんな事しないよ ね!エッちゃ…」 「うん!分かった!」 「エッちゃ!……」 クスッ……   今日の事をいつかきっと、楽しかったって思い出すんだろうな…… それから間もなくの、ある日のベントー時間 「オータくん、ナナくん!コレ、エッちゃんが作った”イモ菓子”だよ 食べてみて! ウマイよ!」 「ナンだよ コッチ連れて来いよ」 「そうだよオレたちと一緒にベントー食べようよ」 「まあまあ エッちゃんを待っててあげて…」 藤井が”ダメ!”って言わなくなったけど…… いつでもおいで…    待ってるから…………… ”マジック”を侮るナ!   終
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