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”マジック”を侮るナ! ②

 周りを気にするってのは、今日はナシだ。 にしても、藤井… お前はちょっとソレは表に出し過ぎではないのか? いくら彼女がかわいい、愛しているからと言って、お前の方が周りの事を気にするべきでは… 「羨ましい……」 え!? 隣で虹生が言い、彼のその言葉に驚いた。 お前もあんなコトされたいの? 「オレもエッちゃんに触りたいな…」 「ぇえっ!?」(ナンだソッチか…)  藤井は自分のバッグを肩に掛けながら、彼女の荷物も持っていた。 随分な過保護のように思って見てたんだが、それは違ったらしく、藤井の都合に合わせた事だとやっと分かった。歩きながら彼女の事を、触る為にそうしたようだ。……  彼女が自分でリュックを背負ってしまったら、それが藤井のジャマとなり、彼女の背中や腰を触る事が出来なくなる。  ……オシリにも…… 歩きながら、道筋を誘導しながら、藤井は彼女をやさしくエスコート……には、間違っても見えなかった。ソレは”手を添える”の範囲を明らかに超えた、とてもイヤラシイものに見えた。  自然に馴染ませた行為のように振舞っているのだろうが、藤井の”スケベ振り”が、すぐ後ろにいる”同性”の俺たちにはバレバレに映っていた。 彼女はそんな藤井の手や腕を、自分の肩から落としたり、回避するようにカラダをくねらしたりと、落ち着かない様子だ。  今日は休日仕様の”エッちゃん”を目の当たりにした、少々の心の動揺から始まり、そして今は何やら怪しげな恋人同士の風景を間近に感じ、ウッカリ今日の目的が何だったのか忘れそうになる。こんな、普段自分から離れている景色のそばにハルバル自転車でやって来たのに、俺は自分のすぐ前にいるふたりばかりを見てしまっていた。 「旺汰より、”スケベ”がいたね…」  虹生が小声で言った。彼も前のふたりを見ていたようだ。 俺たちの会話は前のふたりに奪われたようなものだ。 ふたりから目が離せないでいた。  藤井のスケベな手から逃れようとしているエッちゃんから、目が離せない… 普段の彼らはどんな感じなんだろう… 今と同じ? それともやっぱりふたりきりの時とは違うのかな… じゃあ”嫌がっていない彼女”って、どんなふうなんだろう…… 前のふたりを見ながら、自分の知らない場面を勝手に思い浮かべたりしてしまう。 オトコだから仕方ないのかもしれない… 彼女に申し訳ないと思いつつ、彼らに釘付けになっていた。 あれ?…  そう言えば…と、気が付いた。 彼らは手を繋いでたはず。 よく見ると繋いではいるが、いつの間にか藤井の左手と、彼女の左手が繋がっているという、さながら”舞踏会にいるふたり”のような、妙な繋ぎ方をしている。 それは彼らの日常なのだろうか??? 藤井の利き手がそれによって自由になっているようだ…… 「本当に、なんて ス ケ ベ なんだ! 虹生、本当の”スケベ”ってのは、アイツの事を言うんだ! 俺なんか、全然じゃないか!!」 「……別に普段自分が言われてるからって、そんなに力説しなくてもイイから…… こんなに人がいる所でアンナンじゃ… ふたりっきりの時って一体……どんなコトしてるんだろうネエ・・・  なんて、考えちゃうよね……」 「……うっ うん……」  虹生の妙な言い回しががまた俺の脳内を震わせた。 ああは言ったが、俺は藤井を強く責める事が出来ない事を虹生は分かっている。 でも俺たちはちゃんとわきまえているんだ!  そして… 俺は虹生の事を大事には思ってはいるが、オンナノコに興味がないわけじゃあない!  虹生だってそうだ 藤井はそれを知ってるはずなのに、ナンで、どうして、お前は俺たちがいるすぐそばで、そんなコトをスルかなあ…… ソレは決してキライなコトではない。 むしろ興味があるコトで、自分から切り離せないコトなんだ。 うん。 ダ イ ス キ なコトだ!! ナ~ア…虹生…… ……そして何よりデカかったのは、目の前で行われているソレは、”エッちゃん”であった!! ってコトだ……   俺たちには刺激が強い事は言わずもがな……。
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