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Skip 25 ”マジック”を侮るナ! ①

「旺汰も”エッちゃん”って、呼ばせてもらえば?堅いなあ… エッちゃん、旺汰の事”おうた”って呼んでいいんだよ」 「じゃ、オータくん」  虹生に促され、”エッちゃん オータ”と呼び合える仲になった。 どんな些細な事でも、彼女との距離を縮められる事は嬉しい。 俺は”エッちゃん”と、もっと仲良くなりたいと思っていたから。 「ぇえ!ズルイよ 俺も ”じゃ、オータくん”」 「藤井、オマエは別に変えなくてもいいよ… なんか、キモイし」 「何でだよヒイキだ! って言うか、エッちゃんにもしもの事があったら、どう責任取るつもり?」 「ミズキそれ、どういう意味?」 「アッハッハッハッハッハッ 何でオマエはすぐ、話がそうなる?」 「……いい!俺の事は好きに呼べ!」 「ヤッターありがとう”オータくん”」 「旺汰…」 「君たちも今度から、俺の事は”エッちゃんのミズキ”って、呼んでいいよ クスッ」 「ヤッダ ミズキ!」 「アッハッハッハッハッハッ…」 藤井はそのまま ” 藤 井 ” だ  駐輪場から出て、湖畔に向かって俺たちは歩き出した。 今日は晴れの休日とあり、家族連れのような観光客が多く見えた。 今はまだ午前中だ これからもっと混み出して来るんだろう。 駐車場には車の出入りを誘導してくれる係員が数人いて、観光客が喜ぶ日射しの中を彼らは笛を鳴らし棒を振っている。 それが気の毒に思うほど、時間ごとに暑くなって行った。 「頭が暑い…」  彼女はそう言うと、それまで着ていたボタンシャツを脱いで、頭から被り出した。 ちょっとした事でも彼女ひとりが加わるだけで、どれもが新鮮に感じる。 藤井にはいつもの事なのだろうが、俺には新しい。 きっと虹生もそう感じてるのではないだろうか。  それまでそのシャツで隠されていた、彼女の脚の露出がまた増えた。 そこに何となく目が行きながら、そのそばで揺れている繋がれた藤井と彼女の手を、彼らの後ろを歩きながら見ていた。 最初は手が掠っただけかと思った  彼は俺の手に触れたままでいたから、驚いて彼の顔を確かめるように見たんだ。 彼はただ笑って俺を見たから、手をちゃんと繋ぎ直した。 こんな人の多い所では初めてだった。  前を歩く彼女が後ろにいる俺たちの事が気になったのか、こちらを振り返った。 並んでる俺たちの顔を見ただけで、ニッコリと笑ったんだ (トクン・・) その”ニッコリ”を見て、俺の中の重く感じていた何かが外れたように軽くなった。 いつもどうしてだか彼女のこの”ニッコリ”を見ると、誘われるように自分もニッコリ…と、彼女に返した。 藤井はこの彼女の”ニッコリ”を見ただけなのに、泣いた事があった そう言ってたのを思い出した。  ……うん… 何となく分かる……
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