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彼女のリボン ⑥

「やっぱり気持ち悪いよね… ごめんね…あとで俺がちゃんと言っておくから… 理由が分かったからとりあえず大丈夫だ」 「気持ち悪いって言うか… 冗談みたい……」 「エッちゃん… 君の”マジック”はね、冗談ではなくて、”不思議”なんだ 君に… 簡単に…… 恋 に 堕 ち て し ま う……」  エッちゃん… ミズキはいつもいつも君に何度でも恋に堕ちる…… 君を知れば知るほど… まだ自分の知らない君がいる 君がまたキレイになり、また新しい君が生まれる 繰り返し 繰り返し 俺は君にまた恋をする…… 「……という事で、あとは俺が何とかしなければ……」 彼らの”ソレ”は恐らくまだ”初期症状”… 病状が進む前に何とかせねば…  ミズキの言ってる事が、時々分からない時がある。 私には難しくて理解出来ない事を、大真面目に話すから私は黙って聞いてるしかないんだ 昔から……。 でも、コレ… どうすればいいの?  トモダチ作るのも、昔のようには行かないね……  放課後の賑やかな廊下に出ると、ナナオくんと三島くんと向こうを向いてふたりと話をしながら私を待ってるミズキを見つけた。 私は声を掛けずにミズキの手に自分の手を忍ばせたの。 ミズキは向こうを見ながら、だけど私だと分かったように握ってくれた。 三島くんとナナオくんは話をしながら私に愛想をくれ、そして私たちの繋がれた手をふたりはそれぞれチラッと見た。 私はふたりからの愛想に、今度は応えなかった。 ”手を繋ぎたい”? どういう意味で言ってるんだろう 私は誰とでもいい そんな意味で言ったわけじゃない 私は自分が繋ぎたいと思ってる人と繋ぐ 「!… イッテ… エッちゃんどうしたの?」  話の邪魔をするつもりはなかったんだけど、ミズキの手を握力測定器を握るようにギュッと気付いたら握ってた。 あれ… ”プリンの目”…… どうしたんだろう…… 「ミズキ 今日、バイトは?」 「ないよ」 「ユイは今日、バイト! だから帰ったら★赤ちゃんを作る練習★しよ!」 『 !!! 』 「エッ… エッちゃん…」 「聞こえなかった? ★赤ちゃんを作…」 「分かった! エッちゃん分かった… そしたらね、三島、ナナくん」  彼女はさっき繋いだ手をそのまま離さず、放課後の人がグチャグチャとしている廊下を隙間を見つけ、俺を引っ張るように玄関まで進む。 「ど… どうしたの? エッちゃん……なんか怒ってる?」 「ミズキ!」 声を掛けると彼女は止まって振り返り、真っ直ぐに俺を見た 「私は自分から意味もなく、誰にでも触らない」 「ん? うん…」 「私は意味もなく、誰にでも笑い掛けない」 「……う…ん……」 「私は誰のモノでもない、簡単に誰かに自分を触られたりしないし、私も触らない!」 「エッちゃん?」 彼女はまた片足で床を一蹴りして言った 「私が★赤ちゃんを作る練習★を一緒にしたいと思うのは、ひとりだけ! 私には”冗談も不思議”もない!!」 「 !! 」  あんなに混雑していた放課後の風景だったのに、俺と彼女の周りだけが別の世界にいるような空間が出来ていた。彼女が言った言葉の後からどよめきが聞こえたような気がしたけど、俺の目も耳も、俺の全てが彼女だけになっている。 別々のカラダをしていながら、ふたりが一緒に血液をカラダ中に巡らせているような感覚だ。 ああ… エッちゃん……俺のスベテが俺の君だ……  でもねエッちゃん 君の言ってる事はひとつだけ間違ってる 君のマジックはやっぱり存在してるんだ だって… 俺はもうこんなに苦しい…… 君のマジックを操るのは、やっぱり君自身 俺がどうこう出来るわけがなかった…… 「……エッちゃん……」 「帰るよ ミズキ!」  やんちゃな顔になった彼女は、そこで俺から手をスルリと離した。 それまで引っ張られるようになっていた俺は、今度彼女を追い掛ける。 「待って エッちゃん!」  ああ 同じだ… 君は振り返り俺を見て笑う 君はいつでも俺に笑ってくれる 昔からそうだよね いつもちゃんと俺の所に来てくれる そうだね… 余計な事は考えなくていい… 俺は俺の、君の事が大好きだという気持ちを大切にする  さっきまでの”プリンの目”はもうなくなって、今はいつものかわいいエッちゃん いや…  いつもよりもスゴクかわいいよ…… やっぱり君は俺のかわいい……  いや… ”俺だけのかわいいエッちゃん” 彼女のリボン   終
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