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もっと君の中に入りたい… ⑧

 初めて彼女と話をしたのは、学校ではなくて偶然見つけたあるドラッグストアの駐車場で会った時だ。彼女はひとりでそこにいたんだ  遠出の帰り道で見つけたそこに旺汰が寄りたいと言い出し、建物脇にある駐輪場に方向を向けた。 その少し離れた隅っこに女の子がひとりしゃがんでいて、自分の足元のアスファルトに何か一心に書いている様子が見えた。 異様だ…… そのそばをオレと旺汰は無言で自転車で通り過ぎた。 オレたちの事が気になったのか、その女の子は顔を上げオレたちの事を見た。 「あれ… こんにちは……こんな所で会うなんて……おウチこの辺なの?」  今、”異様”と感じた女の子は同じ学校で同じ学年の女の子 話をした事もないのに、気安く声を掛けてしまった……ヘンに思われただろうか……  そうしてしまったのはキミの事を聞かない日はないという位、学校で毎日キミの話をして来るトモダチがいて、それで話をした事もないのに、キミとはもうトモダチになっているような、そんな気持ちになっていたんだ。  その位、キミの話を聞いているんだよ。 「鳥海さんこんにちは…  じゃ、行って来るから待ってて…」 「ん…」  旺汰もほら… 何の躊躇いもなくキミの名前を言ったりしてる いきなり”エッちゃん”って言わないのが、旺汰らしいけどね。 「ここで誰かと待ち合わせ?」 ”何してるの?”とは聞けなかった 「ううん… 散歩ついで……今、買い物中で……ここで出て来るの待ってるの」 「へ、へ~… 一緒に入らな…」  言い掛けで言葉を止めた もしかしたら、自分と同じ理由かもしれない。 だからその代わりにこう、聞いてみた。 「もしかして、買い物してるのって 藤井?」 「何で分かるの? ……三島くんも平岡くんの事、”ここで待ってろ”って言うんだね」 「やっぱり一緒だと旺汰が落ち着かなくって嫌だって……」 「なんで?ただの買い物なのに……ヘン!」 「ホラ… オレたちの場合は特に……悪い事してるわけじゃないんだけどね」 彼女がなぜか怒っているようで、オレ何かヘンな事言ったかな……  この子と同じクラスではない この子の彼氏と同じクラスなんだ。 その彼氏から毎日毎日何回も聞く俺のかわいいエッちゃんは、オレの中にもすっかり馴染んでしまった言葉だ。キミ本人はソレを知らないのかもしれないけどね この子自身も、毎日毎日”かわいいかわいい”って、彼から言われてるのかな…  確かにかわいい子だよね… どこまで、ナニがあんなに言われるほどかわいいのかは、彼にしか分からないんだろうけどさ……クスッ 「藤井から毎日聞いてるよ キミの事」 「え! 何を!?」 「藤井の言う俺のかわいいエッちゃんは、ウチのクラスではもう知らないヤツはいないんだ」 「!!」 「アッハッハッハッハッハッ…・・  あ! ごめん…」 女の子相手なのに、笑う所間違った… 「違う…ごめん……バカにして笑ったわけじゃなくて…」 「……”かわいい”は今度から言わないでもらおうかな」 「え…なんで? かわいいよ… キミ……”エッちゃん”」 「……………」  あ… ボケツ掘ったかな… 冗談言ったわけじゃないのに…… 女の子ってムズカシイ…… この”エッちゃん”は、オレと一緒なのが落ち着かないのか、あまりオレの事を見てくれない。 それともオレのようなオトコは苦手なのかな… 残念だけど、そういう人間はやっぱりいるんだ でもそれは、キミのご機嫌が悪かっただけと知り、オレは安心したよ。 だって、藤井の彼女だろ?オレも仲良くなりたいよ  皆で仲良くなったら、今よりもっと楽しくなると思うんだよな……   「ねえ平岡くん」 「な、なに?」 彼女から突然話し掛けて来たから、何事かと思っちゃった でも嬉しいね 話し掛けられると 「悔しいから一緒にお店の中に入らない?ミズキと三島くんの所に行こうよ ふたりで!」 「ぇえ!?」 「ミズキはね、ここに来たいって私を引っ張り出しといて、着いたら”ここで待ってて”って言うの、意味分かんない!」 「!… アッハッハッハッハッハッハッ……」 「なんで、笑うの?」 「それは… だから……藤井がどうしてそんな事するのか、分かるよその内きっと… 多分、買う物って旺汰と同じモノじゃないカナ~…」 「……益々分かんない!」 「アッハッハッハッハッハッハッ…」 この何とも言えない、ふたりのソレの初々しさが伺えて、オレはまた笑ってしまったんだ。
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