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Act.4-02

「こんな所まで呼び出して、いったい何のつもりですか?」  そう青年に訊ねるトキネの口調からは、遥人が知っている穏やかさが微塵も感じられない。  トキネは相変わらず、青年に険しい視線を投げかけながら、なおも続ける。 「わたくしはもう、あなたとは逢わないと申したはず。わたくしとあなたがこうして逢うことで、周りを傷付け、苦しめてしまう。それはあなたが一番お分かりのはずでしょう?」 「なら、どうしてそなたはわたしの呼びかけに応じた? 届けた文を読まず、いや、読んだとしても黙殺することだって出来たはずであろう?」 「それは……」  トキネは唇を強く噛み締め、青年の真っ直ぐな視線から逃れようと俯く。  青年が、一歩、また一歩とトキネに近付く。  そして、彼女の前で立ち止まると、華奢な身体をすっぽりと包み込んだ。 「すまない……」  青年から、謝罪が紡がれた。 「わたしはそなたを愛している。その想いは今でも決して変わらない。されど、そなたを伴侶にすることは出来ぬのだ……」  伴侶にすることが出来ぬ――  遥人は青年の言葉を訝しく思い、首を捻る。  だが、その理由はすぐに分かり、同時に衝撃を受けることとなる。 「――何故、そなたとわたしは兄と妹なのか……」 (兄と、妹……?)  一瞬、耳を疑った。  しかし、青年は確かに、自分とトキネを『兄と妹』なのだと言った。  遥人の中に緊張が走った。  ふたりのやり取りをジッと見据えたまま、唾をゴクリと飲み込む。 「兄妹でなかったら、そなたをここまで苦しませなかったであろうに……。年老いて死ぬまでずっと、そなたと添い遂げられたであろうに……」
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