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Chapter.7 愛され続けて*Act.2-01

 春休みに入ってからはほぼ、バイトに明け暮れる毎日だった。  お金を稼ぎたいのはもちろん、書店自体が繁忙期だから猫の手も借りたい状態だ。  卒業や入学祝用にと、本や図書カードがよく売れる。  そして、教科書も扱っているからそれを目当てに来る人も多い。  辞書や参考書の問い合わせも多いし、店はまさに戦場だった。  こんな状況で、「予定外の休みを下さい」なんてなおさら言えるはずがない。  四時間フルで稼ぎ、ようやく休憩に入った頃にはさすがにグッタリしていた。  店裏の狭い事務所兼休憩室で折り畳み椅子を広げ、家で簡単に拵えてきたおにぎりに齧り付き、温かいお茶を飲んで一息吐く。  壁ひとつ隔てただけなのに、この空間は不思議と静かだ。  だから店の喧騒を忘れてのんびり寛ぐことが出来る。  ひとりでおにぎりを平らげ、お茶をゆっくり喉に流し込んでいた時だった。 「はあーっ、疲れた疲れた……」  そうぼやきながら、立原さんが小部屋に入って来た。 「お疲れ様です」  私は椅子に座ったまま、立原さんに会釈する。  立原さんも私に向けて、「お疲れ」と返し、自らのロッカーからお弁当を出して事務机に向かって腰を下ろした。 「今日も凄いわ。問い合わせ問い合わせ問い合わせ……。もうキリがないったら!」 「ですよね……。時期が時期だから仕方ないのかもしれませんけど……」  私が立原さんの言葉に応じる側で、立原さんは机にお弁当を広げ、ムシャムシャと食べ始めた。
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