77 / 80

Chapter.5 嫌いにならないで*Act.7-03

 高遠さんの手が離れた。  気付けば信号が青に変わっている。  少し物悲しさを感じた。  でも、運転するのに手を握ったままでは危ないから、それを考えたらさすがに何も言えない。  ちょっとわがままなぐらいがちょうどいい、なんて言われたけれど。 「――また、手を繋いでくれますか……?」  私が問うと、高遠さんがチラリとこちらを一瞥し、すぐに前方に視線を戻した。 「もちろん」  高遠さんは大きく頷いて見せた。 「俺の方がお願いしたいぐらいだ。手を繋いで、キスして、抱き締めて……。これより先は、もう少ししてからだね」  高遠さんの言わんとしていることはすぐに察した。  でも、私からは特に何も口にしなかった。  少し迷った。  でも、これぐらいならば許されるだろうかと思い、ゆっくりと手を伸ばした。  高遠さんの太腿に触れてみる。  もちろん、触れるだけでそれ以上のことはするつもりは全くない。  振り払われるかな、とちょっとだけ不安になった。  でも、そんなことはなかった。  高遠さんの左手がまた、ハンドルから放れた。  そして、膝に乗せられた私の手に重ね合わせてくる。 「――危ないですよ……?」  他人事のように指摘してしまった。  高遠さんは相変わらず前を見たままだったけれど、「大丈夫」と口元に笑みを湛える。 「真っ直ぐな道を走ってる間だけだけどね。あ、曲がる時は早めに言ってくれよ?」 「もちろんです。事故を起こされたら困りますから」 「あはは、全くだ」
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!