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Chapter.5 嫌いにならないで*Act.6-02

 ようやく落ち着いてから、高遠さんはブラックのままコーヒーを啜る。  私は砂糖一本とミルクを一個入れ、「いただきます」と挨拶してから口を付けた。  ほんのりとした砂糖の甘みとミルクのまろやかさが身体の芯から温めてくれる。 「美味しい……」  自然と口から出た。  そんな私を、高遠さんは優しく微笑みながら見つめている。 「ただのインスタントだけどね。でも、美味しいって言ってもらえるのは嬉しいな」 「きっと、高遠さんと一緒だからなんだと思います。すごく幸せだな、って……」 「――君の口からそんな言葉が出るとは思わなかった」  高遠さんに改めて言われ、私も自分で驚いた。  確かに、今までの私ならば自然とこんな台詞は出てこなかった。  高遠さんの腕が私の背中へと回された。  ゆっくりと頭をもたげると、切なげに私を見つめる高遠さんと目が合った。  トクトクと鼓動が速度を増す。  もしかしたら、高遠さんにも音が伝わっているのかもしれない。  私が瞼を閉じると、高遠さんの吐息が少しずつ近付く。  二度目の口付けだった。  ただ、初めての時と違い、ほのかに苦いコーヒーの味がした。  私は高遠さんの深いキスに翻弄される。  まともに呼吸することすら許されず、酸欠になったのではないかと思うほど高遠さんに酔わされた。  このまま最後まで抱かれたい。  この間だって、本当はキスだけでは物足りなさを感じていた。  なのに、高遠さんはキスより先に進もうとはしてくれなかった。  唇が離れると、名残惜しさを物語るように透明な糸が私と高遠さんを繋いでいる。
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