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Chapter.5 嫌いにならないで*Act.6-01

 なりゆきとはいえ、急に高遠さんのアパートへ来ることになるとは考えもしなかった。  しかも夜だから、日中に来た時以上に緊張が増す。 「適当に座って」  高遠さんに言われ、私は少し遠慮したものの、先ほどのことで疲れも増していたので素直に座った。  高遠さんはその間、ファンヒーターとコタツに電源を入れる。  そして、隣室でコートを脱ぎ、スーツ姿のままで戻って来た。 「コーヒーでも作るね」  そう言って、高遠さんは台所へ向かう。  高遠さんが台所で作業をしている間、私はコートを脱いで軽く畳んで隣に置いた。  改めて部屋の中を眺めてみると、ファンヒーターとコタツの他に、テレビとナチュラルカラーのカラーボックスがふたつ置いてある。  カラーボックスの中には仕事関連と思われる書籍、一番上にはノートパソコンとプリンターが鎮座している。  これが大人の男性の部屋なんだな、と思う。  弟の侑大も男だけど、高遠さんの部屋と違って無駄に物が多い。  漫画も整理しきれずに山積みになっていて、よく母親に叱られている。 「何か珍しいものでもあった?」  高遠さんの声に、私はハッと我に返った。  見上げてみれば、高遠さんは両手に不揃いのマグカップを持っている。 「砂糖とミルク使う?」  カップをコタツの上に置きながら訊ねてくる。  私は、「出来れば」と答えた。  さすがにブラックは苦手だ。 「分かった。今持ってくる」  高遠さんは小さく笑みを浮かべ、再び台所へ戻った。  そして、すぐにスティックタイプの砂糖とポーションのミルクを持ってきてくれた。
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