71 / 94

Chapter.5 嫌いにならないで*Act.5

 言われた通り、私は駅で高遠さんが来るのを待っていた。  外にいるよりは寒さを凌げるものの、それでも黙って立っていると冷えてくる。  初めて高遠さんと逢った頃のことを考えると信じられない気持ちだった。  興味は抱いていても警戒心を解くことは出来なかったから、どれほど不安があってもこうして救いを求めることなんてなかったと思う。  でも、今はどうしようもなく高遠さんが恋しい。  キスだけでは足りない。  もっと私を抱き締めてほしいとさえ思ってしまう。 「絢!」  しばらく同じ場所で佇んでいると、私を呼ぶ声が聴こえてきた。  弾かれたようにそちらに視線を向けてみれば、高遠さんがなりふり構わず私の元へと駆け寄って来る。  私の足も自然と高遠さんへと向いていた。  駅には人がいる。  でも、そんなことも全く気にせず、私は高遠さんの身体に飛び込んだ。 「ごめん。待たせてしまったね?」  抱き着く私の頭をポンポンと叩きながら、高遠さんは優しく声をかけてくれる。 「何かあったの?」  高遠さんの問いに、私はただ首を振ることしか出来なかった。  でも、私が急に電話をしてきたことで、ただごとではないと思ったに違いない。 「――俺のトコに来る?」  少し躊躇いながら高遠さんが訊ねてくる。  私は今度は首を縦に動かした。迷いは全くなかった。  高遠さんはそっと身体を離した。  そして、代わりに私の手に高遠さんのそれを絡めてくる。  直に伝わってくる高遠さんの温もりに、私はこの上ない安堵感を覚えた。  高遠さんへの愛おしさも込み上げ、もっと触れてほしいとさらに強く思った。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!