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Chapter.4 触れて、側にいて*Act.5-08

「でも、そこまで楽しみにしてくれるんなら、ちゃんとプランを練っておかないとね。もちろん、行きたいトコとかあるなら遠慮なく言って、絢」  あれ、と思った。今、最後に下の名前で呼ばれたのは気のせいだろうか。 「あの、高遠さん……?」  私はおずおずと訊ねた。 「今、私の名前を、下の方……」 「ごめん!」  咄嗟に謝られてしまった。 「つい、呼び捨てで君の名前を……。不愉快、だった……?」  私は何度も首を横に振った。 「いえ、全然。私の名前、好きなように呼んで下さい。高遠さんには、『絢』って呼ばれたいです……」  好きなように、と言いながら、〈絢〉と呼ばれたいなどと何気なくわがままを口にしてしまった。  高遠さんの両手が、私の頬を挟んできた。  また、キスをされてしまうのかな、と思ったけれど、違った。 「じゃあ、遠慮なくこれからも呼ぶよ。絢」  手が頬から離れ、今度は身体ごと包み込まれる。  首筋に、高遠さんの温かい吐息を感じた。 「絢……」  また、私の名前を口にする。  友達や家族にも下の名前で呼ばれているのに、高遠さんに呼ばれると特別なものを感じる。  幸せとはこういうことを言うのだろうか。  高遠さんといると心が温かくなるし、とても安心出来る。  やはり、私は高遠さんに恋しているのだ。 「――好きです……」  ほとんど無意識に告白していた。  高遠さんの腕に力が入り、さらに強く抱き締められた。 「ありがとう。俺も絢が好きだよ」  高遠さんも私に応えてくれた。  ――私は、最高の幸せ者なのかもしれない……  そんなことを思いながら、私も高遠さんの背中にゆっくりと両腕を回した。 [Chapter.4-End]
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