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Chapter.4 触れて、側にいて*Act.5-04

「――して下さい……」  ほとんど無意識に口にしていた。  私は何を言っているのだろうと不意に冷静になるけれど、ほんのわずかでも大人の世界を覗いてみたいという欲望が芽生えたのも確かだった。 「――本気で言ってる?」  瞠目しながら高遠さんが恐る恐る訊いてくる。  無理もない。  高遠さんと同様――いや、私自身がもっと驚いているのだから。  私は小さく頷いた。  キスぐらいで、と七緒と佳奈子に言えば笑われるかもしれない。  でも、私にとっては〈大人〉の扉を開く第一歩だ。  まだ、怖いという気持ちは完全に拭いきれいないものの、高遠さんになら全てを捧げてといいと思っているのも本心だった。 「目、閉じて?」  高遠さんに言われるがまま、私は再び目を閉じる。  今度は何も起きずに終わるなんてことはないと思う、多分。  心拍数が上がっている。  高遠さんの吐息を近くに感じる。  最初は口角に温かいものが触れる。  それで終わるのだろうかと思ったのだけど、高遠さんの唇は私のそれに重ねられた。  高遠さんと出逢うまでは、それほど異性に興味はなかった。  淡い恋のようなものはしたことがあったけれど、触れ合いたいとかそんなことを考えたことは全くなかった。  その私が、今、高遠さんとキスしている。  キスしながら、私はずっと、この人の側にい続けたいと心から思った。
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