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Chapter.4 触れて、側にいて*Act.2-01

 高遠さんのアパートへ行く当日となった。  その日は前日から妙に落ち着かず、結局ほとんど眠れなかった。  現在時刻は午前六時。  暖かい時期ならとっくに明るくなっているけれど、冬の今はまだ真っ暗。  しかも、冬だけあって寒さが半端じゃない。  日曜日の早朝は家の中はシンと静まり返っている。  仕事も学校も休みだから、当然、お父さんもお母さんも弟もまだ起きてくる気配はない。  私は自らの身体を両腕で抱き締める格好でリビングに入る。  まず、室内の電気を点け、ファンヒーターを稼働させる。  部屋全体が暖まるまでにはまだ時間がかかる。  それから私はキッチンスペースに入り、ガステーブルに置かれた大鍋に火をかけた。  中には、前日から仕込んでいた筑前煮が入っている。  筑前煮はそれなりに手間がかかるから、前日に作った方が楽だし味も良く染みる。  改めて蓋を開けて確認すると、我ながら美味しそうに出来たと感心してしまった。  ちなみに昨日、バイト終わりにスーパーに寄って筑前煮の材料を買ってきた。  調味料は家に一通り揃っているものの、メインの材料はないものもあったから、思い付く限りで買い込んだ。  結構な重さになった。  でも、高遠さんが喜んで食べてくれるかもしれないと考えると、そんな重みもさほど苦にはならなかった。  家に帰ってから軽くご飯を済ませ、いそいそと筑前煮を仕込んでいる私を、家族全員訝しく思っていたらしい。  確かに、普通に考えたら私の行動はおかしく映るかもしれない。  でも、誰も特に深く追求してはこなかった。  七緒と佳奈子とお泊まり女子会をよくするから、またそんなところなのだろうと思われたのかもしれない。  何にしても、あまり過保護じゃないのはありがたい。  もちろん、連絡なしに急に外泊することはさすがに認めてもらえないけれど、前もって報告しておけば特に何も言われない。  いや、『よそ様にご迷惑はかけないように』という釘はしっかり刺される。
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