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Chapter.2 もっと知りたい*Act.2-05

「――すいません……」  思わず頭を下げた私に、高遠さんは、「いいから」と穏やかに返してくる。 「むしろ無理を言ってるのは俺なんだし。俺こそ気を遣わせてしまってすまない」  高遠さんの優しさが、また私に小さな痛みを感じさせる。」せめて別の形で高遠さんに返さないといけない。  そう思った瞬間、咄嗟に私の口から、「電話なら」と出ていた。 「――電話?」  高遠さんは瞠目している。  驚いた高遠さんを目の当たりにして、私は慌てた。 「あ、いえ! えっと、無理にとは言ってないんです!」 「いや、俺は全然構わないよ?」  今度は私が目を見開く番だった。 「君さえ良ければ電話するよ。時間も合わせよう。何時なら平気?」  ここまでくると引っ込みが付かない。というより、そもそも電話を誘ったのは私だ。  私は少し間を置き、「日付が変わるちょっと前ぐらいなら」と答えた。  高遠さんはニッコリと頷く。 「分かった。じゃあ、十二時十分前ぐらいに電話するよ」 「高遠さんからですか?」 「もちろん。君からかけたら電話代がかかるだろ?」 「でも、電話代がかかるのは高遠さんも同じだと……」 「ここは年上に甘えなさい」  私に有無を唱えさせる気はないらしい。  年上、などと言われてしまうとこっちが引き下がるほかない。 「じゃあ、待ってます」 「うん、そうしてくれ」  ここまで高遠さんと話し込んで、ハッと気付く。  作業の手もすっかり止まっていた。 「すみません。仕事が……」  気まずい思いで告げると、高遠さんも察してくれたらしい。 「ああ、そうだよね。ごめんね、仕事中に引き留めてしまって……」 「いえ、私こそごめんなさい」 「じゃあ、邪魔にならないように退散するよ。今夜、電話するから」 「はい」  高遠さんはにこやかに手を振り、私に背を向ける。  私は高遠さんを少しだけ見送った。  そして、すぐにやるべきことを再開した。
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