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Chapter.2 もっと知りたい*Act.2-04

「高遠さん、ですか……?」  つい、間の抜けた問い方をしてしまった。  そんな私にその人――高遠さんは、「高遠です」と相変わらず笑顔を絶やさずに返してきた。 「良かった。憶えててくれたんだね?」 「あ、はい。忘れようにも忘れられませんし……」 「そっか」  可愛げのない言い方をする私にも、高遠さんは嫌な顔ひとつ見せない。  本当にいい人にもほどがある。 「今日は本を買いに来たんですか?」  仕事中とはいえ、それほど忙しくないからと私から質問してみる。  高遠さんは、「そうだね」と答えてから、悪戯っぽく白い歯を見せて笑う。 「何かあればと思ってついでに見ようと思っただけだよ。一番の目的は、実は君」 「私、ですか……?」 「うん。こっちから連絡しようと思ってはいたんだけど、さすがにちょっと躊躇ってしまってね。でも、黒川さんに逢いたかったから思いきってここに来てみた」  臆面もなく言われて、私は嬉しさよりも戸惑ってしまう。  答えに窮していると、高遠さんが、「ごめんごめん」と慌てて謝罪してきた。 「これじゃあただのストーカーと変わりないよね。君の気持ちを全く考えずに来ちゃったんだから」  私は黙って首を横に振る。  迷惑だと思っていないのは本音だし、私も高遠さんに逢えたことに少しだけでもホッとしている。 「迷惑ついでに、これからの予定とか訊いて平気?」  高遠さんに問われ、私は今度は頷いてみせる。  そして、「閉店まで仕事ですけど」と答えた。 「バイト終わったらあとは帰るだけです」 「ここって十時閉店だよね。そうなると帰りは……」 「三十分ぐらいでしょうか。レジを閉めたり店のお掃除もあるので」 「そっか……。時間があればメシでもどうかと思ったけど……」  残念そうに言う高遠さんに、私の心がチクリと痛む。  仕事終わりの時間が事実とはいえ、罪悪感を覚える。
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