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1.初仕事

 サキュバス(女性淫魔)は成人すると、インキュバス(男性淫魔)から手ほどきを受ける。そこで人間の男性をどうやってイかせればいいかを学び、教育係のインキュバスからOKが出てから一人で人間の町へ出ていくのだ。  中には初仕事でサキュバスだと早々にバレ、何人もの男を一度で相手した、なんて子もいるらしい。けれどサキュバスにとって人間の男の精はご褒美だから、イかせまくってものすごく満足して帰ってきたのだとか。  もちろん人間にとってもメリットはある。サキュバスとすると精を放つと共に性病も治ってしまうのだ。人間の女性がインキュバスとした時も同様である。それだけでなく不能の男性も元気になり、不感症の女性も感じるようになったりするという。なので魔国と接しているこの国では、淫魔たちが定住したいと望めば居住権も与えていた。  ただし、淫魔たちは性のエキスパートな為弊害もあった。  親から性病が遺伝し、性行為をしたことがないのに性病を患っている女性がいた。治す為にとインキュバスと交わったらその性技のすごさにめろめろになり、その後人間の男性では感じなくなってしまったとか。こっそり彼女以外の女性としたら性病を移され、治す為にサキュバスと交わったら彼女では感じなくなってしまった男性など、なかなかに複雑である。  性病を治したはいいが痴話喧嘩に巻き込まれるのは割りに合わない。そんなわけで淫魔たちによる性技を教える教室なども開設され、娼婦、娼夫にも大好評である。  この国は迫害の恐れがない、ということでサキュバスの初仕事にはもってこいの場所だった。  太陽が沈み、西の空の赤みもそろそろ消えていく頃、一人のサキュバスが町に現れた。元の青みがかった長い金髪を人間のような金髪に変え、特徴的な赤い瞳は茶色に変えた。村ではまとっていなかった布がわずらわしいが、人間の住むところでは服というものを着るのが当たり前らしい。肉感的な胸とお尻が強調されるようなピンクがかったワンピースを着た彼女は男たちの目を引いた。それでいて戸惑ったような、いくぶん幼さを残した顔のギャップに彼女を目にした男たちはゴクリと唾を飲み込んだ。 「あれ、サキュバスじゃねぇか?」 「いや、娼婦かもしれないぞ」 「もしかして、初、とか……?」  二、三人でつるんでいた男たちがひそひそと言い合う。彼女はそれに全く気づかず、どう男性に声をかけたらいいのかと途方に暮れていた。 (大丈夫、エン先生も大丈夫だっておっしゃってくださったじゃない……がんばるのよ、フィナ!)  彼女ーフィリーナ(愛称はフィナ)が自分で自分を奮い立たせ顔を上げた時、側を歩いていた男性と目が合った。 (え? なんで?)  彼女は目を疑った。その男性はなんと自分の手ほどきをしてくれたセカール・エンとそっくりだったのだ。 (そんな、ばかな……なんでエン先生が……)  思わずまじまじとその男性を見る。すると髪と目の色が違うことがわかった。髪形もセカールより短い。いわゆる他人の空似というやつかとフィリーナは胸を撫で下ろした。けれど話はそこで終らなかった。 「もしかして、君、サキュバス?」  その男性に話しかけられてフィリーナは戸惑った。が、これは好機と思い直す。 「そ、そうですけど……」 「よかった。できれば君を抱かせてほしいんだけど、いいかな?」  セカール似のカッコいい男性に思ってもみなかった申し出を受けて、フィリーナの目が輝いた。 「ぜ、是非お願いします!」  差し出された腕に細い腕を絡める。そんな二人の後姿を男たちが恨めしそうな目で見送った。
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