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* 4 * 苦くて愛しいこの味は

 大倉琉は医大を出た後、そのまま大学院に進学して博士号を取得したという若手医師にしては珍しい経歴を持つ。  実家が整形外科クリニックを営んでいる関係上、箔をつけるために博士号を取得しただけだと本人は口にしているが、博士号だけでなく学会が認定する専門医資格も手に入れており、いつ開業してもおかしくないと病院内でも噂になるほどだった。  ただ、本人に独立志向はなく、両親が元気なうちは病院で働きたいと、三葉に教えてくれたものだ。 「もし家業を継ぐときが来たら、そのとき隣にいるのは三葉くん、君がいい」 「どうして?」 「ずっと君を愛でていられるじゃないか」  当たり前のように応えられて、三葉は苦笑する。一目惚れ、の要素のひとつが三葉のすらりとした四肢と骨格であることは付き合い始めてから何度も思い知らされた。いまはそれだけではなく内面もすきだとしきりに愛を囁かれているが、軽薄そうに見える彼が口にすると嘘っぽく見えてしまう。  ――そんな嘘っぽい口説き文句に絆されちゃうわたしもわたしだけど。  病院での日々は苦しいばかりではなかった。琉先生が傍にいてくれたから。  けれど彼が傍にいてくれることで、職場での関係がギスギスしてしまうのが辛かった。  ならばいっそ、離れてみるのも一考だと、そう思っていた矢先に家具発言だ。 「……家具みたいに愛でられるだけじゃ、物足りないの」  転職して、薬局で働いているあいだも、琉のことは気がかりだった。ちゃんとご飯は食べているだろうか、ひとりでも眠れているだろうか……メールや電話の着信が来るたびに、恋しさが募り、彼のことを思いながら自慰に耽る夜もあった。  結局、自分も琉のことがすきなのだなと、夜の恋人たちに精力剤を売りながら痛感しつつも、自分から彼にいまの気持ちを告げることもできないまま――……    * * *  じゅぷっ、ちゃぷ、という水音を耳元で感じながら、三葉は琉の陰茎を舐めしゃぶっていく。  勃たなくなったからどうにかしろ、なんて嘘じゃない! 三葉に咥えられた琉の陰茎はすでに立派にそそり立っていて、このまま蜜壺を貫いても問題ないくらいの硬さを保っている。  けれど琉は三葉に奉仕してほしいらしく、三葉が顔を真っ赤にしながら口淫を施す姿を嬉しそうに見つめている。 「ふふ……舐めているだけで感じちゃうんだ。久しぶりに見るいやらしい君は素敵だよ」 「んっ……もう、充分でしょう? んぁつ」 「だーめ。もっと奥まで咥え込んで。俺を口だけでイかせることができたら、ご褒美をあげるよ」 「……いぢわる」 「勝手にいなくなった罰だよ。俺のこと、嫌いじゃないくせに」  すきなくせに、と言わないところが天邪鬼だ。  三葉は舌を這わせて肉茎をしごきつづける。本気になった三葉を見て、琉は勝ち誇った表情を見せていたが、やがて気持ちよさに身悶え、あっさり果ててしまった。青臭い彼の精液を口の中で受け止めた三葉は、そのままこくりと飲み込んでふわりと微笑(わら)う。  苦いけど、愛しい、彼の味。  そう、まるで。 「――琉先生って、劇薬みたい」
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