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第3話

「雪……」 そう言うと、彼の唇が名残惜しそうに離れる。それから息をすうっと吸い込みながら彼も振り返って窓の外を見た。 「本当だ、ホワイトクリスマスだね」 「だから静かだったんだね」 窓に近づいた私は、窓ガラスを手で擦ってからぺたりと両手を窓につける。 すると氷のような冷たさが指先に伝わってきた。 ガラスに近づけた頬にもひんやりとした冷気が感じられる。 「静か?」 「雪の日は音を吸い込むから、静かに感じない?」 彼もテーブルから離れ私の隣に立つと、窓の外を覗き込んだ。 「いつの間にこんなに降ったんだろう」 信じられないというように目を細めて、彼は窓の外の地面に降り積もった雪を見る。ここの時間のながれはゆっくりに思えて実は速いのかもしれない。 「雪遊びが出来そう」 「雪遊びしたいの?」 ううんと私は頭を振る。雪遊びがしたいわけではないけれど、雪がやんだらすっぽりと雪に覆われた雪原の上を手を繋いで歩いてみたい気はした。 けれども、それを口には出さなかった。 「今はそれより……」 私は少し背伸びをして彼の首に手を伸ばす。指先が触れると窓ガラスで冷やされた手が冷たかったのか、びくっと彼の肩が竦んだ。 「ごめんね、冷たいよね」 指先が触れないように上手く手を回すと、彼は少しだけ屈んでくれる。 「背が高いと背伸びしないと届かないかな」 そう言った私に、「顎を上げてくれれば、少しだけ屈めば大丈夫だよ」と誰かが教えてくれた気がする。でもやはり私は少し背伸びをした。彼の目の高さで見えるものを私も見てみたい気がしたから。 ゆっくりと近づいた唇が触れ合う前に、私が背伸びしたかかとを下ろす。 彼はあれっという表情で瞬きを繰り返す。 焦らしたつもりはなかったけれど、残念そうに曲がっていく口元がなんだか嬉しかった。 そんな彼を眺めながら首に回した手を片方ほどき、私は彼の眼鏡をそっと外す。 「あれ、眼鏡好きなんじゃなかった?」 「それは誰の話か分からないけど、眼鏡は好き。でも今はちょっと邪魔なの。そういう時もあってもいいでしょ」 「そっか、そう聞いたような気がして」 眼鏡を摘んだまま、もう一度背伸びをして腕を首にまわしてから私は、「ごめんね」と動きそうな唇を塞いだ。 彼はキスをしながら器用に私から眼鏡を取り上げると、後ろ手でテーブルの上に置く。 「確かに眼鏡は邪魔かもしれない。ねえ、ソファに移動してもいい? 窓際は寒いから」 「寒いからだけ?」 ふっと顔を綻ばせた彼の手を引いて、私はソファへ向かっあ。 「ねえ、何度も言うようだけど私普段はこんな事しないの。言い訳みたいに聞こえるかもしれないけれど」 「うん、分かってるよ。でも、僕とはしてくれる」 「そう。私はあまり男の人とこういう事をするのが好きじゃない」 「こういう事って、そういう事だよね。つまり君と僕がこれからしようとしているような事。でもそれを君は好きじゃない。それなら無理する事は……」 すっと引こうとする彼の胸を、私は軽く押した。 ソファに腰掛けるように倒れた彼は「わ!」と、声をあげ目をぱちぱちさせる。 「不思議なんだけど、あなたとはこうするのがとても自然な事のように思えるの」 右膝をソファに乗せ体重をかけていくと、彼との距離がぐんと縮まる。膝上のワンピースのスカート部分がずり上がり露わになった太腿を彼がちらっと見たのが分かった。 でも私はスカートを直すことなく、わざと彼の膝の間に割り込ませる。
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