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第1話

「ん、んあぁ……あ、やめてぇ……!」 「そんなに声出してたら、周りの人にばれちゃうよ?」 「ふぁ、あぁあ……そ、そんな事言ったってぇ」 「それとも、他の人に見られた方が感じちゃう? 可愛い」  背中にぴったりと張り付く三山さんは私の耳元でそう囁いた。秘肉を割り肉壁を擦り上げる彼の屹立は硬さを増して、さらに熱をまとっていた。その熱に浮かされるように、私はただ甘い嬌声をあげていた。その近くでは……鉛筆で『何か』をサラサラと描きこんでいく音が聞こえる。 「三山君、もう少し結合部見えるように……涼香ちゃんの脚上げようか?」 「……はい」  聞こえてくる『第三者』の指示で、三山さんは私の膝の裏に腕を通して、脚をあげた。私たちの粘膜がまじりあい、淫靡な抽送が繰り返される部分が、彼……桐生先生に丸見えになってしまう。 「ああ、ありがと。これでよく見える」 「あぁあっ、あ、や、見ちゃやだぁ」 「だめでしょ、涼香ちゃん。今、『絵のモデル』なんだから」  ここは漫画家である桐生修史先生の仕事場で、新米編集である私は今、女子高生の制服を着て桐生先生のアシスタントである三山さんと共に、桐生先生の新作のために……『痴漢プレイ』なんてやっている。  どうしてこんな目に合っているのか……ちょっと前まで、時間を遡る必要がある。 *** 「イヤ! それだけは絶対イヤです!」 「お願いします! この通り! 頼める人なんて涼香ちゃんしかいないんだよ、頼むよぉ」 「そんな事言ったって……なんで次の特集の痴漢物のために、私がそんなプレイに付き合わなきゃいけないんですか!?」  大学を卒業して入社した念願の出版社。本当は女性向けファッション誌の担当になりたかったのだけど、配属されたのはなぜか成年向けの漫画編集部。でも、ここから異動した人もたくさんいると聞いて張り切って仕事をしていたけれど……今、目の前で土下座せんばかりに頭を下げている桐生先生が厄介者だった。ことあるごとに「ネタがない」とか「いい構図が描けない」など我がままめいたことを言って私を呼びつけ……。 「すいません、遅れました」 「三山君、待ってたよ~」 「私待ってないです!」  このアシスタントである三山さんと組ませて……い、いやらしい事をさせようとするのだ。保健室の先生と生徒という設定から始まり、人妻と宅配便屋さん、上司と部下……桐生先生に付き合わされたプレイは、そろそろ両手で足りなくなるくらいだ。呼び出されるたびに毎回断ってはいるのだけど、桐生先生の土下座と。 「このままだと原稿落としちゃうかもなぁ~いいのかな~」  と言う脅しに根負けして、いつも不本意ながら三山さんに抱かれる羽目になっていた。三山さんもそのために呼ばれたと分かっているせいか、この桐生先生の仕事場に来るときはばっちり衣装でキメてくるのが腹立つ。今回は、サラリーマンが着ているようなグレーのスーツだった。  桐生先生は、クローゼットから私の衣装を選び始める。いそいそと取り出したのは、ブレザーとブラウス、赤いリボンに赤いチェックのスカート。どこにでもいそうな女子高生の制服だった。私にそれを押し付けて、そのまま廊下に私を出してしまう。着替えるのは、いつもここだった。  私は否応なしに、その制服に身を包む。スカートの丈が異様に短い事だけが気になる。私はもう何度目か分からない溜息を吐いて、コンコンとドアをノックした。ドアの向こうからは、ガサガサという何かを動かす音と「どうぞー」という朗らかな桐生先生の声だった。 「失礼します……」 「あら、似合うじゃない」 「褒められてもうれしくありません!」  私が頬を膨らませて怒ると、桐生先生はどこか楽しそうに笑う。  部屋の隅、ハンガー掛けのところにはどこで入手したのか分からない電車の吊革と……その真下に薄い姿見の鏡が置いてあった。先生はそのすぐ傍に座ってスケッチブックと鉛筆を手にしている。 「ああ、あとこれね」 「う……」  以前、「先生からの目線がはずかしい」と訴えていた(らしい。情事の最中で、私は全く覚えていない)私のために、いつからか真っ黒な目隠しが用意されていた。私がそれをつけると、三山さんが私の腕を掴んで……きっと、その姿見の前に立たせたのだろう。 「中野さん」 「ひゃっ!」  三山さんが私の耳元で囁く。じっとりと湿っていて、頭の奥にまで響く様な深く低い声だ。 「『サラリーマン役』の俺が、『女子高生役』の中野さんの体を後ろから触って……最後はそのまま立ちバックっていう流れだから。最初はちょっと嫌がって欲しいんだって、ただ最後の方がちゃんと気持ちよさそうにしてよね」 「そ、そんな段取りの打ち合わせいらないですから、とっとと終わらせましょう?」  私の声が震える。三山さんがわざとらしく、私の耳にふっと息を吹きかけた。 「やぁ……っ!」 「いいの? 編集がそんな事言ってさ……先生がイイ作品を作るためなんだから、頑張ってよ。それも仕事なんでしょう?」  私が唇を噛むと、桐生先生の笑い声が聞こえた。すっと三山さんの体が離れたと思うと……どこからか、電車の音が聞こえてきた。そんな環境音まで用意しなくたっていいのに。そんな風にリアルを突き詰められてしまうと。 「はい、じゃあスタート」  元役者でもある、アシスタントの三山さんのスイッチが入ってしまうのだ。
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