13 / 15

13.天使さんの恋愛観は、人間とはだいぶ違うみたいです。

「あなたが申し訳なく思う必要はないと思いますよ。  無理を言っているのは僕達天使の側なのですから。  恋愛というのは、お互いがよく知りあってからするものですし。  それに、人間界の恋愛や結婚は通常、一対一で行われるということも、僕達は知っています。  その基準を壊して、いきなり僕達全員を受け入れろと言われても、あなたが拒否するのは当然のことでしょう」 気遣いあふれる言葉をかけてくれる文人さん。 ありがとうございます、って返したいんだけど、ちょっと待ってください! 軽々しくお返事返せないような衝撃的な内容が含まれていませんでしたか今!? 「人間の恋愛や結婚は通常、一対一で行われる」ってそんなこと言っちゃう天使さん達の常識はどうなってるんですか? 「基準を壊して、いきなり僕達全員を受け入れろ」ってなんのこっちゃ!? て、天使の恋愛は人間の恋愛とはだいぶ違うということなんでしょうか!? 「アヤトの言う通りだよ。 君にはこれから私達のことをよく知って貰って、その上で全員と結婚して欲しいからね。 始めに君から拒否されることは、私達の想定の範囲内だ。 君の拒否を肯定に変える、それこそが私達四大天使の試練だからね」 「それにね、俺達天使の恋愛は博愛主義なんだ。  男女ともに大抵複数人のパートナーがいるから、人間みたいに嫉妬とかもないんだよ。  だから君は、安心して俺達四人を愛してくれて大丈夫☆」 ああーっと!! 美歌様と癒羽くんの追い打ちがだいぶスゴかったぁぁぁ!! これはもはやどこからツッコメばいいのか皆目見当もつきません!! とりあえず!とりあえずの大前提として!! あたしが四大天使候補の皆さんと将来結婚するのは決定事項なんですか!? 昨日確かにセラフィム様から四大天使との関係がどうのという話は聞きましたが、そこまでは言及してなかったと思うんですけど! 「ちょっちょちょちょ、ちょっと待ってください!  私はあなた達と、いつかは結婚しないといけないんですか!?」 ぐるぐるする頭かかえて、思わず叫んじゃう。 悪い夢なら覚めて欲しい。 もういっそ昨日のセラフィム様登場あたりから夢でお願いしたくなる。 この事態はあたしにはちょっと荷が重過ぎるような気がする。 「しないといけない、というのは少し語弊があるね。  正確には、君に結婚したいと思って貰えるように、私達が努力するってことだよ」 ソファの真ん中に座っている美歌様は、慈愛すら感じさせるような顔でほほ笑んでる。 でも、あたしはそのほほ笑みがとても恐い。 だって、その表情も口調も、自分達の努力は必ず報われるという、絶対的な自信に満ち満ちているから。 「そうですね。結婚という以前に、あなたの愛情を勝ち得るよう、僕達も尽力するつもりです」 美歌様の左隣に座っている文人さんも同じ。 美しく理知的にほほ笑む顔には、失敗なんて言葉は僕の辞書にはありません、って書いてある。 「これでわかったでしょ。 君はこれから、俺達の共有の恋人になるんだってこと。 皆でたっぷりかわいがってあげるから、覚悟しといてね」 ソファの左端で、背もたれに腕をかけてる癒羽くんは、ニコッと笑ってウィンクしてくる。 けれどそのいたずらっぽい癒羽くんの表情の中には、獲物を狙う肉食獣みたいな獰猛さが潜んでる。 これはあたし、かなりヤバいんじゃないかな…。 嫌な予感を感じながら、あたしはぼそりと言ってみる。 「今後私達がよく知りあったとして。 でも、その結果、私が皆さんのことを好きにならないっていう可能性もありますよね」 この天使さん達が言う、あたしに結婚を了承して貰うための努力や尽力っていうのが、具体的にどういうものなのかはわからないけど。 この三人のことを知っていって、その結果あたしが全員を好きになる可能性は、百パーセントじゃないはず。 生意気な意見かもしれないけど、乙女心としてはそう簡単にいきませんと主張したいところ。 恐る恐る様子を伺ってみると、三人は驚きの表情を浮かべて黙りこんでいる。 「なるほど。四大天使の試練の苦難とは、つまりこういうことですか。  僕は今初めて実感しましたよ」 考え深そうな顔をして最初に口火を切ったのは文人さん。 隣のほうを見ながら、あなたはどうですか、って美歌様に同意を促している。 「そうだね。私も驚いたよ。  天使の魅力に抗える人間など存在しないと思うんだけど…そういう可能性を考えてしまえるのが、人間というものなんだね」 美歌様が首をふるたび、長い金髪がさらさら揺れる。 自信過剰と思える発言だけど、そんな姿も様になる感じだからやっぱり美歌様ってすごいな。 「俺達天使の常識は通用しないって言われてたけど、ここまでとは予想外だなぁ」 眉根を寄せながら、うーんと癒羽くんがうなってる。 まじめな感じの癒羽くんもなかなかかっこいいな…ってダメだあたし。 しっかりしろー。 あなた達には惚れないかもねって、生意気言ったそばから三人に見惚れてどうする! 両頬を手で叩いて気合い入れ直してるあたしに、まだ困惑気味な文人さんが話しかけてくる。 「誤解を招いてしまっているかもしれませんが、僕達はけっして、あなたの気持ちを蔑ろにしているわけではありません。 僕達の常識からすれば、天使の愛を拒絶する人間など考えられないのです。 誠意をもってあなたに気持ちを伝えさえすれば、いずれ必ずあなたに愛して貰える――それが僕達の考えなのですよ」 「私には…その気持ちはわかりません」 だって、あたしは人間だから。 天使ではないから。 「わからない、か。  それならしょうがないね。  私達は、君とのその違いを埋められるよう歩み寄るだけだ。  なかなか困難そうだけどね」 「確かに簡単ではなさそうですね。  ですが、こういった種族間の困難を乗り越えてこそ、天使としての成長があるということなのでしょう」 「壁は高いほうが、乗り越えた時の達成感が大きいって言うしねー」 おお。 なんだか天使さん達納得してくれそう。 よかったよかった。 いい感じだし、ここでもいっこ釘刺しとこ。 「今の私にはあんまりそうなるとも思えないんですけど…。 もしあたしがこれから皆さんと恋愛したとして、将来そのぉ…全員と結婚、とかもちょっとありえないかな、って思います」 よし!言えた。 結婚といえば一生ものだからね。 まだ高校生だしそんなこと決められないし。 一人だけならまだしも、四人と結婚ってなんだ。 そんなの全然想像もつかないよ!っていうあたしの意見なんだけど、これはちょっと調子のりすぎたんでしょうか。 「えっ!?私達と恋愛しておきながら、結婚はしないのかい?」 飛び上がらんばかりに美歌様が驚いていらっしゃる。 「それはちょっと…ありえないにもほどがあるのでは」 ちょっと顔赤くして咳き込む文人さんの顔には、屈辱の二文字が浮かんでる。 「あっははは。やっぱり君っておもしろいよね。  俺達に恋したあとで、他の天使や人間を相手にできると思ってるの?」 癒羽くんは、お腹抱えて体をくの字に曲げつつ大爆笑。 えええー。 あたしの発言はそんなにおかしいのかなー。 「よしんばあなたが、僕達に満足できなかったとして。 それでどうして、他の天使や人間の男性を愛せると思うのですか。 その理由をぜひとも聞いてみたいものです」 「本当にね。私達ほどの存在を差し置いて、君の心を射止める天使や人間がいるというのなら、ぜひともお目にかかりたいものだよ」 「そんな奴どこにもいないでしょ。 でもそういう期待をしちゃうとこが、人間の女の子のかわいらしいとこってわけだね」 天使さん達の自信が全開ですよ。 この天使さん達の、自分達こそ最上!みたいな考えはどこからくるんですか。 いち女子高生のあたしには全然理解できないし、ついてけない感じなんですけど。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!