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12.プロポーズの理由を聞いてみました。

「あーあ、マモは逃げちゃったね」 「だから昨日、絶対断られると言ったはずなのに。  伝わっていなかったかな?」 「いえ、ミカの説明は十分すぎるほどでしたよ。  でも、それを受け入れることができずに突っ走ってしまうところが、マモルの愛すべきところではありませんか?」 「確かに。それであんなふうにもろに傷つくんだもんね。なんか不器用な性格だよねー」 「あ、僕は紅茶を入れてきますね」 ええー。三人ともおだやかに談笑してるー。 美歌様と癒羽くん、フツーに机を挟んであたしの向いにあるソファに座ってくるよ。 あれ、三人の服がいつの間にかいつもの制服に戻ってる。 あ、花束は消さないんですか? あぁ。あたしにくださるんですね。 「あ、ありがとうございます」 って大人しく花受取ってる場合じゃないよあたし! ツッコミ!ツッコミたいことが山ほどあるよ。 「あ、あの、なぜいきなりプロポーズなんでしょうか?」 告白とか恋愛とかすっ飛ばして、プロポーズまで話がいっちゃう理由はいかに。 しかもさっきの会話だと、玉砕がわかった上でやってるときたもんですからね。 美歌様と癒羽くんがソファに腰落ち着けるのも待てないくらいのあたしに対して、お二人はなんとも悠長な感じで顔を見合わせている。 「あぁ。今のはね、私達の気持ちを伝えるためのパフォーマンスだよ」 「そうそう。昨日あの後三人で、プロポーズの方法話しあったんだ。  どう?少しはドキドキしてくれた?」 「はぁ?」 疑問符いっぱいの返事しかできないよ。 会話がちっとも噛みあってない気がするのはあたしの気のせいじゃないよね。 気持ちを伝えるためのパフォーマンスってなんだろう…。 どこをどうして、その伝えたい気持ちとやらがプロポーズになるんでしょうか。 天使の思考回路って人間とちょっと…いや、かなり違うのかなぁ。 「あの、私、あなた達と結婚するつもりありませんけど…」 とりあえずこれだけは言っておこう。 じゃないと天使さん達の暴走はとんでもない方向にいっちゃいそうだし。 そりゃ確かに天使さん達は異性としてそれぞれに魅力的だとは思うけれども。 けれどもですよ。 昨日知り会ったばかりの男性といきなり婚約だの結婚だの言われても、正直よくわからないっていうのが、普通の女の子の反応なんじゃないでしょうか。 「もちろん今は、そうだろうね。でも、いずれは必ず結婚して貰うから。  今から知らせておこうと思って」 美歌様、そんなにイイ笑顔で華麗に宣言しないでください!! いや、なんですって!? いずれは必ず結婚して貰う!? そんなこといったいどなたが決めましたので!? 「結婚が決まってるんですか?  いつ、どこでそんなことになっちゃったのか、私にはさっぱりですけど…」 とまどうあたしに対して、美歌様はあくまで鷹揚な態度を崩さない。 憎いくらいの余裕ぶり。 隣の癒羽くんはというと、おもしろそうな目であたしのこと見てる。 ぐぬ。 あたしが困る姿も、天使さん達からすれば予想の範疇ということか。 なんかちょっとおもしろくない…。 「君は今朝、うわの空で聞いてなかったみたいだけど。  私は君にあの時、今後の私達と君との恋愛関係について、大事な話があるから、放課後あけておいてくれ、って言ったんだよ」 「あっ!」 言われて思い出したよ! あの、美歌様の話聞いてなかった~、っていう時のこと。 確かにあたし、朝登校したら四人全員が教室にいた衝撃とか寝不足とかの疲れのせいで、美歌様の話まったく聞いてなかったんだ…。 「やっぱり。恋愛関係って私が言ってるのに、君があんまり素直にわかりました、って返事をするから、ああ、これは聞いてないな、とは思っていたけどね」 「ま、彼女も寝不足なんじゃない?  昨日あんなことがあった後だし」 しょうがないな、という風に嘆息している美歌様と、あたしへのフォローを口にする癒羽くん。 て、天使っておそろしい…。 何もかもお見通しって感じだ。 この人達って、人間のあたしが太刀打ちできる相手なんでしょうか…? 嫌な予感が湧きあがりかけたところで、四人分の紅茶をトレーに載せた文人さんが戻ってくる。 「どうかしましたか?少し、顔色が優れないようですが」 優雅な手つきで紅茶を配る文人さんは、あたしを見て心配そうに声をかけてくださる。 「あなたは今朝から体調が悪そうでしたからね。  これを飲んで、少し落ち着かれてはいかがでしょう」 だめ押しのように文人さんからもあたしの不調を指摘されてしまう。 あーあ、なんだかちょっと降参って感じだ。 そんな優しく笑いかけられながら紅茶出されたら、飲まないわけにはいかないよね。 ああー、落ち着くー。 文人さんの入れてくれた紅茶おいしいー。 あたしが普段飲んでる、安物ティーパックの紅茶とは、味も香りも段違いだわ。 ん?なんか美歌様があたしのことじっと見てる。 あ、これはあれかな? さっきの話の続きがきちゃう感じかな…。 「君が落ち着いたところで、話を蒸し返すようで悪いけど。  さっき私が言ったことは、動かしようのない事実だから。  君にも、ぜひ前向きに考えて欲しいんだ」 やっぱりきたー。 ってそんな固い言葉でおっしゃられてますが、確かあたしと天使さん達との結婚の話ですよね? えーと、そのー。 つまりは、四人の天使さん達との結婚を前向きに考えろってことですかね。 うん、やっぱり落ち着いて考えてもおかしいな。 そんな急に恋愛とか結婚とか言われてもね。 あたし四人のことまだほとんど何も知らないし。 それにいきなり四人ですよ。 四人、つまりは複数人。 結婚は普通一対一でするものだよね。 毎回天使さん達ナチュラルに私達~、俺達~、僕達~って複数形使っていますけれどね。 いいかげん突っ込ませていただきますが、そもそも恋愛も結婚も、複数人相手にするもんじゃないと思いますよ!! 「申し訳ないですけど、やっぱり、急に結婚とか言われてもよくわからないです。  そもそも、私は昨日皆さんと知りあったばかりですし。  それに、恋愛や結婚は、一人の相手とするものですよね。  天使さんは四人もいらっしゃいますし、いきなり全員に迫られても、あたしとしてはなんとも…お返事のしようがありません」 これが今のあたしが言える精いっぱいだ。 天使さん達があたしのことを思って、こうしていろいろとしてくれているのはわかるけど。 だからといって、すぐに恋に落ちたり婚約したりはあたしにはできない。 でも、ちょっとはっきり言い過ぎたかな。 なんとなく罪悪感を感じて、顔をうつむけちゃう。
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