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9.四人の天使さんには、それぞれ能力があるそうです。

「彼らの言うとおりですよ。あなたはただ彼らを信じればいい。 四大天使候補は、数多いる天使の中でも選りすぐりの能力をもった天使達です。 彼らは自分達の能力をシンデレラ・ガールにわけ与えることができる。 あなたは彼らから能力を受けとり、より魅力的な女性へと導かれていけばよいのです」 セラフィム様まで! そんなふうにうんうん頷きながら諭されてもですねー。 「うぁ、はい?」 話が壮大すぎて変な返事しかできませんよー。 そしていいかげん天使さん達あたしの体触るのやめてー。 せめて落ち着いて話を聞かせて欲しい…。 「あなたをこの人間界でどのようなカリスマにするのかは彼らが決めること。 無垢なる魂をプロデュースことを通じて、彼らは天使に必要なものを学ぶのです」 そうなんですかー。 つまりあたしは四人の天使さん達の勉強道具になるんですね。 だから能力の器なんですね。 えー、そういえば能力ってなに? 「能力というのは個々の天使達が司っている力のことです。皆それぞれ違うのですよ」 「そう。私はミカエル候補で、音楽を司る天使。あなたに音楽の才を授けましょう」 美歌様の極上スマイル発動ですね! そうか。美歌様はミカエル候補で音楽の天使様だったんですね。だからあんなに歌が上手なんですね。 あたしに音楽の才能をくださるんですか?すごいなー。 「俺はラファエル候補だよ。癒しを司る天使なんだ。きみに治癒力をあげる」 あー、なんか落ち着くぅ。癒羽くんの癒しスマイルすてきー。 治癒力くれるんだね。って治癒力ってなに?ケガとか治す力貰えるの? それ貰っちゃったらあたし超能力者じゃない? 「僕は知恵を司る天使です。あなたにこの世界の叡智を与えましょう」 厳かな感じがすごい出てるー。 文人さんは知恵を司ってるんですね。確かに超頭よさそうですもんね。 でも世界の叡智ってそれ女子高生が貰っていいものなんでしょうか? 「オレはウリエル。審判を司どる。お前はオレの言うこときいてろ」 護くん、なんかよくわかんないよ! 審判ってなに?あたしは護くんの命令に従えばいいの? 「マモル、それでは説明になってないよ。ちゃんとウリエル『候補』といいなさい」 「それと審判っていうのは能力じゃなくて役割に近いよね。まぁマモの立場は特殊だからしょうがないけど」 「僕達は一方的に彼女を従えるわけではないと、あれほど先代達に諭されたでしょう」 わー、三人がフォロー入れてる。 こう見ると護くんは皆の弟みたいな感じ。 「うるせぇよ」 あ、キレてる…けどちょっと顔赤いしテレてるのかな? 以外にかわいいところもあるんだね。 「ふふ。四人とも仲がよさそうで私も安心ですよ。 昨今の天界と人間界のかい離は深刻ですからね。 シンデレラ・ガールをカリスマにするには四人で協力することが不可欠です。 それは皆さんわかっていますね」 「もちろんです。セラフィム様」 四人を代表して美歌様が答えてる。美歌様はきっとこの四人のなかではリーダー的存在なんだね。 「よろしい。では私の説明もそろそろ終わりにしましょう。 美空愛海さん、あなたはこれからこの四人の天使達から、類稀なる能力を授けられます。 しかし、恐れることはありません。 昨今の人間界の状況を踏まえて、天使達の能力には封印がほどこされています」 「封印、ですか?」 「そうです。あまりに突出した人間を作ることがないよう、天使達の能力に封印をかけました。 なので、ジャンヌや聖母マリアのような歴史的な人物を作ることは彼らにはできません。 どうか安心して、彼らに身を任せてください」 ううーん。 それで安心できるかどうかははわからないけど…。 少しはシンデレラ・ガールって立場を受け入れられそうかなぁ? いや流されちゃダメじゃないかなあたし。 カリスマとか言ってるしやっぱりなんかちょっと恐い気がすんだよ…。 だいたいさっき聞いた能力もだいぶ壮大な感じだったし…。 ってあれ、そういえば能力はどうやって貰うんだろう? 「そうそう。大事なことを伝え忘れていました。 実は、天使の能力は体液を介さないと受取ることができないのですよ」 「「「「「えっ!?」」」」」 見事にハモった五重奏! ってなんで天使さん達までびっくりしてるんですか? 皆さんも聞いてなかったんですか?なんで!? 「びっくりしましたか?四人に封印をかけるときに私が仕掛けをしたのです。 君達がより彼女と密接な関係を築くことができるようにと、私からのささやかな餞別ですよ」 いやいやいやいや。 餞別ってなんですか?それ誰トクですか?あたしからしたらむしろ迷惑千万ですよ! ちょっとセラフィム様、一発殴らせて貰っていいですか? あなたが全知全能の神とか関係なくどうしても一発殴りたいです! ってセラフィム様ちょっと体透けてません? 光の粒子が舞ってますけどどうかしたんですか? 「あぁ。もう時間ですね。私は天界に帰らなくてはならない。 あなたとお別れしなくてはならないなんて、とても寂しいですよ」 …うぅ。 そんな憂いをたたえたお顔をされたって、ほだされませんからね。 言い逃げなんてズルいですよ。ダメですよ。 絶対一発は殴らせて貰うんですからって、でもお姿が綺麗すぎてやっぱり殴れないー。 「ふふ。あなたのそういうところが、私は好きですよ。 私はあなたのお側にいられませんが、ずっと天界からあなたを見守っています」 だからどうか、彼らと幸せになってください。 あたしの耳元に唇を寄せ、かすかな声でセラフィム様が告げる。 なんだかちょっとせつない。 「ま、また会えますか?」 今にも消えてしまいそうな儚げなセラフィム様の姿に胸をつかれて、とっさにそう聞いてしまう。 「会えますよ、必ずね」 もし慈愛の天使というのが実在するなら、きっとこんな顔。 そんなふうに思わせるようなものすごく優しいほほ笑みを残して、セラフィム様は消えてしまった。 いなくなっちゃった…。 セラフィム様も、司くんも。 そう改めて認識すると、胸にぽっかり穴があいたような感じがする。 「はぁ…」 しらず溜息がもれてしまう。 「そんなに気をおとさなくても、きっとすぐセラフィム様に会えるよ」 「――っ!」 いや美歌様、なんであたしの頭をなでてるの? 「そんな顔をしないでください。あなたには、僕達がいますから」 文人さんも、あたしの手を握って優しく笑いかけてくる。 「俺達で、君の寂しさを埋めてあげる」 癒羽くんはあたしの手を取り持ち上げて、自分の頬にすりつけている。 「他の男のことなんか考えてんじゃねーよ。バーカ」 仕上げとばかりに護くんのデコピンがとんでくる。 もしかしなくても、皆あたしのこと元気づけようとしてくれてる? やり方はそれぞれだし、あいかわらず四人全員であたしのこと囲んでくるし、ちょっと暑苦しい感じがしないでもないけど。 でも、あたしのことを想ってくれているっていうのが伝わってくるから、少しくすぐったい気持になっちゃう。 「ふふっ」 思わず笑うと、四人も安心したように笑顔を向けてくれる。 あぁ。こういうのも、なんかいいかも。 シンデレラ・ガールとか、人間界のカリスマとか、そういうのはよくわからないけど。 この四人と一緒に過ごす高校生活も悪くないかなって。 この時のあたしは、確かにそう思っていたのだ。

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