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7.司くんの正体は、全知全能の神様らしいです。

『素晴らしい!合格ですよ』 ってホイきたここで新展開を知らせる天の声! いや、待って。 ホントに今声が上のほうから降ってきたよね!? 今のなに!?しかも合格って何に合格? って、 「うぇぇぇぇ!?」 ちょ、ちょっと待って!? あたしの目の前で司くん、発光してない!? いやなんかすごい眩しいってえぇ?体の中心から光るってどうやってんの? もうだいぶ光すごすぎて姿かすんじゃってるけど!? 何これイリュージョン? え。なんで今ここでイリュージョン始めちゃうの司くんちょっと!! 常識にすがりつきたいあたしの気持ちを無視して、光に包まれた司くんの姿がみるみる変化していく。 謎の発光?がすごすぎてぼんやり形しかわからないけど、猫背の小柄な男の子からすらりとした長身の男性の姿に変わってるみたい。 えー。これは手品なんだよね。タネとシカケがちゃんとあるんだよね。 目の前でクラスメイトの男子がメタモルフォーゼって現実じゃないよね。 ホント何これ。 「――ふぅ」 「元」司くんだった男性が頭を振る。 とたんにまばゆい光が消えて、いつの間にかあたしの目の前にはナルニ○国とか指○物語に出てきそうなファンタジックな男性が立っていた。 いやファンタジックな男性ってなんだよっていわれそうだけどそう形容するしかない。 だって銀色の髪は床にまで届いちゃってるし、服なんて月光を編んだんですよねって感じの 薄く光る布だし、顔立ちなんて今まで見たこともないくらいすんごい綺麗。 これはハリウッド仕込みのドッキリなんかな。 この男の人はエルフ族役の俳優さんなんかなそれとも… 「エルフ族ではありません。天使です」 うお。いきなり銀色おにーさんが、あたしのこと見つめながら話しかけてきたよ。 なるほど。天使か。 あの背中に羽がついてて手にラッパ持っててファミレスの壁とかに描いてあったりする… って、天使? 「そう。あぁ、自己紹介がまだでしたね。私はセラフィム。天の国を統べる者です」 いやおにーさん、そんな胸に手をあてながらかっこ良く仰られましてもね。 私はセラフィム。天の国を統べる者――って、そんな自己紹介あります? それ言われてあたしなんて返せばいいんです? お目目ぱちぱちしてポカンとすることしかできないよー。 「返事をする必要はありませんよ。私は常に全ての天使と人間の意識を読んでいますから」 ……はい? すぐに理解ができないよ。 今このファンタジーな銀色おにーさんはなんておっしゃいましたかね? 「私は天の国の支配者。人間界では全知全能の神と呼ばれる存在です。 …ってこれ自分で言うと少々恥ずかしいですね」 ふふふってちょっと赤くなってらっしゃるおにーさん、あなた神なんですか? 全知全能の神様なんですか!? それはすごすぎやしませんか!? 「いえ、あなたが思うほど全知全能の神はすごいものではないのですよ。 いろいろとできることにも制限がありますし… それに私はこの学院の校長も兼任していますから。 そんなにかしこまるほどの存在でもないです」 全知全能の神はそんなにすごくもないですか!? だいぶセリフにぶっ込んでる感ありましたけど 今学院の校長もやってるっていいましたか? うちの学校の校長は全知全能の神なんですか!? いや入学式で見た校長先生はバーコードヘアにハンカチで汗ふきふきしてる話の長いおっさんでしたよ!! 「あれは私が冗談で披露した人間の擬態ですね。生徒達からは少し古いと不評でしたが」 えー。バーコードヘアおじさんの正体が神様だったりするんですか。 しかも生徒達といいましたか。 なんで生徒達は、校長先生の正体がセラフィム様だって知ってるんですかね。 もしかしてこの学院の男子生徒全員、天使だったりしてー。 さすがにそれはないよねって思いたいんですけどあたし。 でもそんなあたしの気持ち関係なく、あー、セラフィム様。こくこくうなずいてらっしゃるー。 そういうことなんですかー。 この学院の生徒達は全員天使なんですかー。 じゃああの生徒会役員四人組も天使ってことだよね。 イリュージョンに無反応だったあたりでまさかまさかと思ってはいたけど。 うんまぁ四人ともちょっと浮世ばなれしたオーラ出てるもんね。 人間じゃないって言われても納得だよ。 「よかった。天使の私達を受け入れてくださるんですね。 さすが今どきの子らしく素直で助かりますよ」 わー。お褒めいただきありがとうございますー。 もうだいぶ驚くの疲れてきたのでツッコミは控えさせていただきますけど。 つまりあたしは天使だらけの男子高に一人まぎれこんだ人間の女の子っていうことですね。 この学校の校長はセラフィム様で全知全能の神様で、この方式でいくとたぶん司くんもセラフィム様の擬態ってわけですね。 「その通りですよ。見事にまとめてくださいましたね」 うん。頑張りました。 うすうす気づいてたけど認めたくないーっていつまでも逃げてても仕方ないからね。 最近のドラマだと逃げるのも役に立つらしいけど、どっかで心決めないとずるずるいっちゃうからね。 「素晴らしい心意気です。 あなたには謝らないといけませんね。 いくら試練のためとはいえ、私は司という男子生徒に扮して、ずっとあなたを観察していました」 う。そうだったんですか。 セラフィム様は司くんに化けて、ずっとあたしを見てたんですか。 なんかもう、いろいろ頭パンクで指摘すんの忘れてますけどね。 さっきからセラフィム様、ナチュラルにあたしの心の中読んでますよね。 ということは、セラフィム様はずっと、あたしがイジメられてる男の子を見てどういう考え方をして、どういう行動をとるのかを観察してたってことなんだね。 「本当にすみません。さきほどの四人の不穏な態度も、あなたを試すためのお芝居だったのです。 あなたの良心を弄ぶようなことをしてしまって、なんとお詫びすればいいのか…」 「別に私は怒ってません。よくわからないけど、必要なことだったんですよね」 憂いを湛えた綺麗なお顔のセラフィム様。 悪意なんてものとは超無縁な感じのこの人が、いたずらに人の心を弄ぶようなことをすとは到底思えないし。 なんであたしのこと観察してたかはよくわかんないけど、きっとなにか重要な理由があってのことなんだよね。 それにね。 あたしがなんだか試されてたっぽいなんてことはどうでもいいんだ。 だって、あたしにとっては、司くんがリアルにイジメられてたわけじゃないってことのほうが重要だから。 「司くんが現実にはいないっていうのは少し寂しいですけど。 彼が本当にイジメられてたわけじゃないって聞いて、安心しました」 セラフィム様は頭の中を読めるから、声にだす必要がないのはわかってる。 でも言わずにはいられないんだ。 だって、あたしの中の司くんは人間だからね。

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