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1.超名門全寮制男子校には、超キラキラな生徒会役員四人組がいます。

ドラムのリズムを刻む音が、半円形のホールに満ちた静寂を打ち破る。 続いて始まったベースとギターの派手な伴奏とともに、ステージの緞帳がするすると開くと、観客の興奮が爆発する。 「「「うおおおお!!」」」 「「「わあああああ!!」」」 講堂全体が揺れるほどの大歓声。 それに負けじと響くのは、極上の声の持ち主による、アップテンポの陽気な歌。 推しメンの名前を口ぐちに叫び、ステージ上で行われているライブに熱狂しているのは――全国にその名を轟かす超名門全寮制男子高、聖セラフィム学院の生徒達。 ただ今大盛り上がりで開催されているのは、全体朝礼という名の、生徒四人組による生音生演奏ライブ。 いや、なんで生徒が全体朝礼でライブ開催してるんだ、とか。 男子が男子に向かってわあきゃあ騒ぐのはどうなんだ、とか。 高校の敷地内に講堂があるっていうのはどういうことなんだ、とか。 いろいろツッコミどころはあるかもだけど、入学してもう一カ月経っているもんで、あたしもだいぶこの学院に毒されてるかもしれない。 とりあえず、朝礼と聞いて集まったこのクラシックコンサートの会場みたいなきらびやかな講堂で、いきなりライブが始まったとしても、驚いたりはしない。 この生徒四人による講堂でのライブは、入学式のときにすでに洗礼受けちゃってるから。 庶民なあたしが名門男子校に、たった一人の女子として入学しちゃって、どうしようって緊張でガチガチになってた入学式。 そこでいきなり、開幕からあの超イケメン四人組がライブ開催し始めたんだよね。 超イケメン四人組。 そう。豪華な講堂のステージ上で、プロのアーティストばりの演奏を披露しているのは、キラッキラなオーラに包まれた超・イケメン四人組なのだ。 あの超イケメン四人組は、いずれも良家のお坊ちゃまばかりが通う聖セラフィム学院で、絶対的権力を誇示する生徒会役員だ。 絶対的権力っていっても、恐怖政治的なやつじゃない。 むしろその逆で、人望集めまくり、カリスマ扱いの学園アイドルって感じ。 それもそのはず。 だってあの四人は、家柄よし!容貌よし!頭よし!って三拍子揃った男子でなければ入学できないこの学院で、さらに抜きんでた輝かしい経歴をお持ちの人達なのだから。 「みんな~、おっはよー! さあ、今日も元気に一曲いってみよ~!!」 長い金髪揺らして、マイク片手に観客煽ってる美青年、ボーカル担当美歌(みか)様は、全校生徒の信任篤い生徒会長。 美歌様の歌唱力はハンパなくて、歌を聞いてるだけでなんだかこっちも活力が漲ってきちゃう。 でも美歌様のすごいとこは歌唱力よりも、なんといってもその容姿。 完璧八頭身の美しい体型に、彫りが深い日本人離れしたお顔は、ハリウッドや海外モデルでも通用しそうなくらい。 実際に、そのずば抜けて淡麗な容姿ゆえ、海外・日本問わずひっきりなしに芸能界デビューの誘いを受けているけれど、それをいつも受け流して学園アイドル、引いてはこの学院の生徒会長という座に甘んじているという噂が、まことしやかに囁かれてる。 「えー、皆の本気、そんなもんじゃないでしょ。 もっと俺に、イイ声聞かせて?」 そんなセリフをマイクに吹き込んで、ウブな男子生徒を何人か卒倒させたのは、ノリノリでメインメロディー弾いているギター担当、癒羽(ゆう)くん。 茶髪に人懐っこい笑顔がトレードマークの癒羽くんは、生徒会副会長。 190センチ以上の高身長と甘いマスク、加えて天然の色気がだだ漏れな癒羽くんは、女性にもモテモテだとか。 美人な大人のおねーさんが数人乗った赤いオープンカーが、校門前まで癒羽くんをお迎えに来たことが何度かあった、とこれも校内でもっぱらの噂。 「なかなかいい歓声ですね。 でも、僕に褒めて欲しいのなら、その程度ではいけませんよ」 超絶技巧の指使いを披露しつつ、小首をかしげて流し眼するクールビューティーは、ベース担当の文人(あやと)さん。 頭脳明晰、眼鏡をかけた美しい横顔がたまらないって、だいぶ熱心な信者を獲得されてる文人さんは、生徒会書記・会計担当。 ダークグレーの艶のある髪に、抜けるように白いお肌の文人さんには、ヨーロッパのやんごとないお貴族様の血が流れているとかいないとか、これもまたまた噂だったり。 「寝てんじゃねぇぞテメェら!! 本気でかかって来いやぁ!!!」 ホール全体を震わせるほどのド迫力。 漢達の「うおおおお!」という怒号を引き出したのは、ドラム担当護くん。 黒髪ツンツンヘアーと、ゴツいシルバーピアスがワイルド&セクシーな護くんは、生徒会庶務担当。 群れるのが嫌いで常に一人で行動したがる護くんは、お昼ご飯も教室では食べず、人気のない屋上で食べるとの噂…ではなくて、これはあたしが実際に目撃したこと。 つい二週間程前、あたしがお弁当箱持って屋上のドアを開けたら、護くんがそこに居たのだ。 コンクリートの上に片足立てて座りながら、ぼーっと空を見上げる姿は一枚の絵のようで、すごくかっこよかった。 もちろんお邪魔なんてするわけにはいかないから、あたしはすぐ屋上のドア閉めて退散したわけだけど、空を見上げる護くんの灰色の瞳が、なんだかちょっと寂しそうで、とても印象的だったのを覚えてる。 とまあ、これが、聖セラフィム学院に君臨する生徒会役員四人組の紹介と、あたしがこの一カ月間学院生活を送る間に耳にした彼らの噂なのでした。

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