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第七章 本当の気持ち 14

 だから「幸司」と呼べる幸せに頬を赤く染めると、幸司はそんな美幸をもっと抱きしめたくなる。 「美幸」 「幸司」  見つめあう瞳にお互いの姿が写し出される。その姿が大きくなると瞼は閉じられ唇が重なる。握りしめられる指に力が入ると美幸の口からは熱くて甘い吐息が漏れる。  幸司の唇によって美幸の体にピンク色の薔薇の花びらが浮かび上がる。次々と付けられるその印に幸司は満足気な顔をする。 「綺麗だ。美幸の身体中に薔薇が咲き乱れているようだ」 「だって、幸司がキスするから」 「美幸は俺のモノなんだ、当然だろう?」  自分が幸司のモノである幸せに悦びを隠せない。嬉しすぎて幸司の首ったけに抱きつく。 「うん、私は幸司のモノ」 「俺は美幸のモノだ」  そこまで考えた事がなかった。これまで幸司は晴海のモノだと思ってきたから、幸司が自分のモノだとそんな感覚は一度もなかった。だから、幸司のその言葉が信じられなくて目を見開いて幸司の顔を見つめてしまう。 「幸司は……私のモノ?」  驚いた顔をする美幸を見て、幸司は優しく額にキスし頷く。 「ああ、俺は美幸だけのモノだ。誓って浮気はしないし、他の女に現を抜かす事はしない」 「いいの? 本当に……はる」  美幸が言いかけると幸司の指が美幸の唇を塞ぐ。そして、瞳を潤ませた幸司は頭を横に振り囁く。 「約束する。美幸だけを愛すると」  こんな幸せなことはあるだろうかと美幸の瞳からは涙が溢れる。まるで幼い子どもが泣きじゃくるように涙を流す。 「そんなに泣くことか?!」  小さな女の子を泣かした気分になる幸司は美幸の涙に困惑する。美幸の涙にオロオロするとベッドから起き上がる。 「だって、幸司には嫌われていると思ったから。だから嬉しいの」  両手で顔を覆う美幸に幸司の胸は罪悪感で痛む。確かに結婚を決めた時はまだ晴海と言う恋人がいて晴海を愛していた。けれど、それでも幸司はこの結婚に最後まで抵抗することはしなかった。 「嫌ってはいない。嫌ってたら結婚なんてしない」 「でも、幸司には……」 「俺が妻に選んだのは美幸なんだ。そして、これから一緒の未来を共に生きようと選んだのも美幸なんだ」  思いがけない言葉に、美幸は気を失いそうになる程に幸せに浸る。そんな美幸をその夜、幸司は眠らせなかった。

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