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第七章 本当の気持ち 13

 すっかり幸司に抱きしめられて眠ることに慣れて来た美幸だが、やはり、明日までに資料を頭の中に叩きこもうとしていただけに、ここで大人しく愛しい男の胸に逃げる訳にはいかない。少しでも頭の中に資料を入れ込みたくて幸司が眠るのを待っていた。 「眠れないのか?」 「そ、そんなことないわ」  ここで眠ってしまっては資料を見ることが出来ない。だからと、折角、愛しい幸司の腕に包み込まれているこの体勢も崩したくない。叶う事なら幸司に抱きしめられながら資料を読めたら素敵だろうなぁと、そんな想いが過ぎる。  すると、淫らな妄想をしてしまうと美幸は体がカーッと熱くなり全身が茹蛸の様に赤く染まる。 「何をモゾモゾしているんだ?」  つい、あの時のラブホテルでの激しくも艶やかな幸司を美幸は思い出していた。恍惚となる美幸に幸司の顔が近づき頬が触れあう。頬ずりをしているような、そんな仕草にますます美幸は体が熱くなる。  体温が上昇する美幸は頭がのぼせたような感覚に陥り、これでは資料を見ても頭には幸司の裸体以外は何も考えられなくなる。 「何もないわ。幸司さんは疲れてるでしょ? 早く寝なきゃ」 「俺より美幸の方が今日は疲れただろう? 早く眠れ」 「そ、そんなことないわ」  美幸の視線の先にはラウンドテーブルの上に置かれた資料がある事くらい幸司はお見通しだ。その資料を見たがっている美幸の気を紛らそうと美幸の唇に口づけをする。 「……んっ」  不意打ちのキスに胸がドクンと跳ねると美幸の頭からは資料と言う言葉は何処かへと消えてしまいそうになる。それが狙いな幸司は、更に美幸の体に覆い被さるように体勢を変えながらキスを深める。 「美幸がそんなに積極的とは思わなかった」  クスッと笑う幸司は、右腕で自らの体を支えるようにベッドに肘を着くと、左手で美幸の右手をぎゅっと握りしめる。指を一本ずつ重ね合わせ掌を広げると指を絡める。交互に指を挟み込むとギュッと握りしめる。  指の間から伝わる熱がとても熱くて、それだけで美幸の頭がボッーとしてしまう。焼けつくような熱に体も心も蕩けてしまいそうだ。 「美幸、可愛い」 「こ、幸司さんは格好いいです」 「美幸は緊張すると面白いな」  何度も肌を重ねているのに初な表情を見せるだけでなく、カチコチになる言葉遣いに笑いが出そうになる。 「幸司でいいよ」 「……え?」 「幸司って呼んでみな」  美幸も愛しい人をそう呼んでみたかった想いはあった。晴海に対抗してではないが、恋人同士の様に「幸司」「美幸」と名前を呼びあってみたかった。

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