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第七章 本当の気持ち 12

 少し気持ちが沈むと持っていた資料で顔を覆う。美幸は歪ませた表情を幸司に見られたくないと咄嗟に顔を隠したつもりだった。けれど、幸司は美幸の気持ちが手に取るように伝わってくると、その資料を掴み取り上げる。 「あ、何するの?」  少しだが瞳を潤ませる美幸は、幸司の顔が近づくと顔を少しでも見られないようにと俯く。しかし、肩に腕を回されては体を幸司の方へと引き寄せられ、ベッドへと押し倒され顔を覗きこまれる。 「……」 「泣きそうな顔をしている」 「ち、違うわ。目にゴミが入ったの」  両手で閉じた瞼を擦りながら顔を少しでも幸司から離そうと反対を向く。  すると、擦るその手を握り締められ顔から引き離される。 「ゴミが入ったのなら擦るな。傷がつく」 「もう、大丈夫よ」  体ごと横に向いた美幸は、ベッドから起き上がろうとするも、幸司に肩を掴まれて身動きが取れなくなる。 「勉強の続きをしたいから」  言い訳がましく理由をつけて幸司から離れようとすると、肩を掴まれていた手が頬に触れてグイッと幸司の方へと引き寄せられる。幸司の顔がドアップになると、美幸は思わず目を閉じてしまう。 「今日はもう休め」 「え?」  近づいた幸司にてっきりキスされるのかと思っていたが、耳許で「休め」と囁かれただけで幸司は何もせずにベッドに胡坐を掻いて座る。  最近の甘い幸司に、この展開だったらキスして欲しいと思わずそんな不純な事を考えてしまった美幸は顔を真っ赤にして幸司に背を向けた。  資料をパラパラ捲り内容を確認した幸司は「やはり明日にしろ」と言って、ラウンドテーブルに資料を置く。そして、そのラウンドテーブルそのものを少し押しやりベッドから引き離す。  美幸は資料を遠ざけられては勉強しようにも出来やしない。それでは明日を迎えられないと資料を追いかけるようにベッドから下りようとする。  すると、幸司に腕を掴まれベッドへと引き戻される。 「少しだけ、もう少しだけ覚えたいのよ」  更にグイッと引き寄せられ、そのまま幸司の胸の中へとすっぽりと抱きしめられた。胸板の厚い幸司の胸に、服を着ているのに何故か裸体のまま抱きしめられている様なそんな感覚に胸がドクンとときめく。 「いいから。俺の言う事を聞け。今夜は大人しく眠るんだ」  逞しい幸司の胸に包み込まれたら抗えない美幸は「うん」と頷くしかない。そして、幸司のお風呂上がりの爽やかな香りがツンと鼻腔を突く。

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