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第七章 本当の気持ち 9

 思いもよらない幸司からの告白に美幸は幸せな気分に浸ることが出来た。幸司がそこまで美幸の為を思って言ってくれた言葉なのだから、それだけで今は十分に幸せになれた。  けれど、それぞれが仕事へと戻り営業部一課で顔を揃えると、幸せな気分は胸の内に仕舞い込み、恋敵でもある晴海との仕事が待っている。 「この企画の資料はこれだけですか?」 「そうよ。それで全部。それに一部しかないの、だからコピー取ってくれる?」 「はい、直ぐにコピーしますので、この資料お借りします」  晴海は自分のデスクに座ったまま、足を組んでは踏ん反り返って美幸を見上げる。そして、複製する資料を乱雑に美幸に渡すと、プイッと顔をそむけてしまう。まるで、どこぞの女王様かと思ってしまう程の高慢なその態度に流石の吉富もその様子を見ていて溜め息を吐く。 「吉富さん、こちらに集中して下さいよ」 「ああ、すまん。相田」 「いえ、分かってたらいいです」  吉富のいつものふざけた物言いが返って来ると思っていた相田だが、真面目な表情をして普通に言い返す吉富に少し戸惑いを見せる。そして、相田との打ち合わせを始める吉富だが、どうしても晴海の態度の酷さに口を挟みたくなる。 「相田、ここは落ち着かない。今日は会議室が空いていただろう? そこへ移動しないか?」 「ええ、良いですけど……」  チーム編成した直後だけに、落ち着かない営業部では吉富も仕事に集中できない。吉富は相田を連れて会議室へと移動することにする。営業部を出て行く時、晴海の隣を通りすぎる時に、吉富は晴海のデスクに何かをポンと置いていく。  デスクの上に小さな物体が転がるのを見た晴海は、何なのかと目を凝らしてみるとそれはイチゴキャンディだった。可愛いイチゴのイラストが沢山入ったシートに包まれたキャンディが三つ、晴海のデスクの上を転がっている。 「飴?」  フッと笑った吉富は何も言わずに相田と一緒に会議室へと向かった。  晴海は、転がるイチゴキャンディを掴むと、グリグリと廻しながらそれを見つめている。可愛いイラストと吉富のイメージが合わない晴海はクスッと笑っていた。 「あの、資料を有難うございました」  美幸がコピーを終えて晴海のデスクへ資料を戻しにやって来ると、慌てた晴海はそのイチゴキャンディをデスクの引き出しの中へと入れ込んだ。 「何かあるんですか?」 「あなたには関係ないわよ」  相変わらず冷たい口調で言う晴海は、美幸を睨みつけると再びプイっと顔をそむけてしまう。

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