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第七章 本当の気持ち 7

 晴海に引き寄せられる様に近づくと、晴海が吉富の首に抱きついて唇を重ねてきた。思いもよらないその行為に驚いたのは吉富の方で、キスされたままどう反応して良いのか体が硬直する。 「私がキスしてるんだから、ちゃんとしなさいよ」  完全に自棄を起こした晴海が自分を使って気を紛らそうとしていると、吉富にはそう思えたが、それでも、晴海の怒りがそれで静まるのであればと、晴海を抱きしめそのキスに応えるように飛びきりの甘いキスをする。 「もっとキスして。もっと熱いキスして」  晴海の悲しそうな顔に、吉富はギュっと晴海を包み込む様に抱きしめ期待通りの激しいキスをしてやる。  一方、書庫では――  晴海に厭味を言われ落ち込んでいる美幸を心配した幸司が、美幸と二人きりになろうと書庫へ連れ込んでいた。  気まずそうな顔をする美幸は幸司とは一歩距離を置き、両手を握り締めモジモジとしている。 「大丈夫か?」 「え? あ、うん。私なら平気よ」  苦笑する美幸に幸司は眉を細める。口元を歪ませる美幸をどう扱って良いのか幸司には分からず、つい美幸の頭を撫でた。 「あ、その。私なら本当に大丈夫だから」 「悪かったな、嫌な思いさせて」  まさかそんな言葉をかけてもらえるとは思わなかった美幸は、それだけで嬉しくて涙が流れそうになった。 「ううん。私、何があっても幸司さんと一緒にいたい。だから……」 「俺が美幸を守る」 「え?」 「言っただろ? 美幸を大事にするって」  もし、幸司の心の中に晴海が居たとしても、この言葉だけで十分幸せなのだと美幸は感謝したいくらいだった。晴海と吉富のラブホテルでの一件で幸司は相当に傷ついている筈なのに、それでもこんなセリフを言って貰える自分は幸せ者だと悦びに打ち震えそうになる。 「うん、幸司さん好き」  微笑みながら見上げる美幸に、幸司は何も言い返す言葉はなかった。「好き」と美幸の言葉に幸司は頷くだけで「好き」とは言い返してくれなかった。きっと、幸司の胸の中には晴海がいるからだろうと、美幸には分かっている。  でも、それでも、美幸には幸司のセリフだけで十分幸せになれる。 ―― 俺が美幸を守る  美幸にはその言葉だけで幸せ過ぎる程に心が満たされていく。 「美幸、キスしていいか?」  幸司の突拍子もないセリフに驚いた美幸は辺りをキョロキョロ見渡し、他に社員がいないのかどうか確認する。そして書庫には自分達以外誰もいないと分かると「うん」と頷く。

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