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第七章 本当の気持ち 4

「チームは良いとして、今の企画はどうなるんですか?」  この気まづい雰囲気を崩すかの様に吉富が口を割って入ってきた。その言葉に相田も頷きながら幸司の方へ視線を移す。 「それはそのまま継続だ。元々私と君等とでやって来た企画だ。それに、引継ぎと言っても簡単には終わらないだろうから、この企画に携わって来たメンバーはそのままだ。それに大石が今度から加わることになる。だから、余計に日下には大石に仕事を教えてもらわなければならない」  真剣な目をして幸司がそう言うと、吉富は晴海の方へと視線を移す。そして小さな溜息を吐くと「課長は残酷な人だ」と呟く。  すぐ近くにいた相田はその言葉を聞いて、噂の晴海を幸司から引き離した事に対して述べているものだと誤解する。 「仕事は仕事だ」  あくまでも仕事と割り切る幸司はそう言う。  しかし、吉富には晴海が割り切れるとは思えなく、晴海と美幸の異様な様子を見ながら言う。 「彼女らにはそう思えませんが」  頭を下げる美幸に対して、そっぽを向く晴海の姿が物語っている様に、穏やかに終わりそうに無い様子に幸司は胸を痛める。 「それに……」  吉富は言いかけた言葉を飲み込み、フッと笑うと自分のデスクへと戻って行く。吉富が何を言いかけたのか幸司には分からないが、きっと、あの日の朝、ラブホテルから偶然出て来た所で鉢合わせた事を言いたかったのかと、自分のデスクへ戻る吉富の後ろ姿を見つめていた。 「相田、この前の資料の確認をしよう。日下が修正していたが、元々渡された資料が間違っていたそうだ」 「え? 元の資料が間違っていたんですか?」  早速吉富は相田と仕事の打ち合わせへと移行する。香川も佐々木に仕事の説明をする為に、佐々木を自分のデスクへと呼んでいる。  戸田と梅田もこれからの打ち合わせなどに入っている。それぞれが新しいチームとどんなふうに仕事をして行くのかを、それぞれのチームで話し合いを始めている。 「日下、暫くは佐々木に仕事の説明をする。だからその間に君は大石に仕事の引継ぎを終わらせてくれ」 「香川さん、そんな片手間に引継ぎなんて出来る訳がないでしょ」  怒りに任せた喋りをする晴海に、横から美幸が少し厳しい口調で言う。 「それでもやって貰わないといけないんです。日下さんには大変だと思いますが宜しくお願いします」  美幸の堂々たる態度に晴海は、あのラブホテルから出て来た時の美幸と幸司の抱き合う姿を思い出す。

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