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第七章 本当の気持ち 3

「そうだ、得意先に詳しいから佐々木とチームを組む香川の補助として一番適任だと思った。日下の能力を買ってるからこそ香川を支えて欲しいんだ」 「ですが、何も無理にチームを組まなくてもこれまで通りで良いのではないですか? 今の得意先は男性社会な所が多いのですから」  晴海を押し付けられた香川もかなり不満気な表情をして言う。美幸以外の補助は必要ないとあれほど宣言したのに、美幸を得られないだけでなく新人の佐々木を押し付けられ、終いにはその補助として幸司と愛人関係の噂のある晴海まで押し付けられるとは。香川は頭痛がして仕事に身が入りそうにない。  しかし、そんな中、クスクス笑うのは吉富だ。いよいよ晴海を手放したとそう思いたくなると吉富にとっては喜ばしいチーム編成の様だ。 「まあ、晴海ちゃんとは別々になったけど、これはこれで受け入れますよ、課長」  吉富がそう言うと、吉富の相方になる相田も頷く。ふざけることの多い吉富でも、一応香川に次いで営業成績は良いのだから。  戸田も梅田も不満はなさそうで、チームを組む相手同士「よろしく」と挨拶を交わしている。  そんな中、納得出来ない香川は大きな溜息を吐くが、課長命令ならば受け入れるしかないと「わかりました」と折れた。 「香川さんは大石さんとチームを組みたかったんじゃないんですか?」  最後の最後まで反発する晴海は香川にまで食いつく様に訊く。 「けれど課長命令なら受け入れるしかない。君も私のチームの一員になるのだから今後は気を引き締めてやってくれ」  今まで手を抜いて仕事をして来たかのように香川に言われ、カーッと頭に血が上る晴海はドスンと大きな音を立てて椅子に座る。その音の激しさにその場にいた社員全員が晴海はこのチーム編成に反対なのだと感じ取る。  すると、美幸が晴海の方へと近づいていく。美幸と晴海の間で何か起きるのかと皆息を飲む。  幸司も美幸の行動に思わず顔を引き攣らせ、何が始まろうとしているのか不安になる。 「日下さん、私では力不足で不満かも知れませんが課長の補佐を頑張りますので、仕事の引継ぎを宜しくお願いします」  深く頭を下げて晴海に挨拶を交わす美幸に、幸司は驚きで目を丸くし体が硬直してしまう。確かに今朝、朝食の時に美幸にはどんな配置だろうが文句は言うなと説明した。しかし、相手は元恋人の晴海なのに、そんな相手に美幸が何故そんな態度に出れるのか幸司は信じられない気分だった。

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