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2.恋に至った経緯をどうぞ

 私こと杉浦理都(りと)は、赤信号に突っ込んできたトレーラーに運悪く轢かれる寸前で異世界へ召喚されたらしい。  轢かれる……! と思い目をぎゅっと閉じたけどいつまでたっても衝撃は訪れず、もしかして手前で止まってくれたのだろうかとおそるおそる目を開けたら、如何にもゲームに出てきそうな魔法使いのローブを身にまとった人たちに囲まれていた。みな黒っぽいフードを被り、もしや黒魔術? と疑うほどの怪しさ満載だったので私は思わず後ずさった。けれどその中心にいた人物が一歩前に出、 「……間に合った」  と心からほっとしたように呟いたその声に、私は固まった。ギギギ……と音がしそうなほどぎこちない仕草で、私は声の主の顔を確認しようと頭を上げた。  その人は私より頭一つ分背が高く、周りのローブ姿の人々たちよりも頭半分ほど突出していた。白人、というほどではないが白っぽい肌に銀の髪が見える。長めの前髪の間から深海を思わせる濃い藍色の瞳が覗いた。 (うわぁ……)  やられた、と思った。  声が好みだったから顔が見たくなったのだ。その顔も美形で、銀髪とかなんなのだ。 「異界からのお客人、初めまして。ラオと申します。わしの言葉はわかりますかな?」  美形の長身男性を凝視していたらその横からいささかしわがれた声がした。私は一瞬反応が遅れたが、「あ、はい」とどうにか返事をした。 「それは重畳。体調はどうですかな? 何かありましたらおっしゃってください」  いかにもなご老人に丁寧に応対され、私は恐縮することしかできなかった。  その後美形の長身男性が宮廷魔導師長で、私を異世界から召喚したのだと伝えられた。 (偶然かもしれないけど、助けてくれたのかしら?)  あのまま召喚されなかったら私は死んでいたかもしれない。そう思ったら、異世界トリップも悪くないように思えた。  それから魔力を測定され、魔力量とやらを確認された。そして王様に挨拶をし、王が魔法使いマニアの困ったちゃんであることを知った。 「そなたが魔法を使えても使えなくても面倒はみるゆえ安心してほしい」  少しふくよかで柔和な笑みを浮かべた王は、理都をはっきり帰すつもりはないとのたまった。その態度に唖然としたが、問題はそれだけではなかった。  界を渡ると元の世界の人々との関係が切れるらしく、両親と兄弟がいたような気がしたが顔も名前も思い出せなかった。友だちもいただろうし学校も通っていたのだろうが人間関係が全く思い出せなくなって混乱した。 「ええと、私は杉浦理都、高校2年生。17歳。学校でしている勉強は……」  途方に暮れていた私を、ラオやどこかからかつて召喚されてきた女性、そして宮廷魔導師長がサポートしてくれたのでそれほど悲観的にならないですんだ。  そうして魔法の勉強をし、半年後ぐらいから少しずつ魔法が使えるようになってきた。これはマンガやラノベ、ゲームからの影響が大きかったのだと思う。中二病が役に立ったと、使えるようになってからの応用は早かった。  それから半年後、私は異例の早さで宮廷魔導師になった。 「宮廷魔導師に任命されました。これからよろしくお願いします!」 「ああ、よろしく……」  どうしても魔導師長の近くにいたかったから。  そう、きっと私は召喚されたあの日、彼に一目ぼれしたのだった。
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