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1.国王が亡くなりまして

 ここは異世界。そして魔力を保有する人々を世界中、いや世界を越えて探している魔法使いマニアの王様が住まう城ーだった。  つい一月ほど前までは。  簡単に言うと、王様は約一月前に亡くなってしまったのだ。  魔法使いマニアの他はそれなりに有能な王だったらしいが、亡くなったことで今まで集めてきた人々をどうするのかという問題が生じた。  魔力は保有しているが魔法が使えない人々は真っ先に帰国を願った。勝手に召喚され、魔法が使えるかどうかの確認をされた後、どうしても魔法が使えなかった人々は必要最低限の生活の保障だけされて放っておかれていたからだ。役に立たないとわかったならすぐに帰してあげればよかったものを、その為の準備をすることすら惜しいと、王は自身の欲求を押し通した。   その結果がこれだ。  宮廷魔導師たちが駆り出され、莫大な手間と時間をかけて魔法が使えない人々を元いた場所に返すまで、ゆうに半年以上かかった。そして返さなければいけないのはもちろん彼らだけではなかった。  巷に住まう魔法使い、それだけでなく宮廷魔導師の中にも召喚されてきた者たちがいた。この国で家庭を持った者たちは帰るのを諦めて残ることにしたのが大半ではあったが、中には妻と子を連れて帰りたいという人もいた。  それでも同じ世界の者はいい。極端な話船を乗り継いででも自国に帰ることができるのだから。  問題は私のように違う世界から召喚されてきた人々だ。  宮廷魔導師長はとにかく優秀な人で、寝食を忘れて異世界の者たちを帰国させることに奔走した。結果独身だった何人かは帰ることができたようだが、私は帰ることができなかった。 「すまない。どうしても君の世界に繋がらない」  王が亡くなって1年が経った頃、宮廷魔導師長はそう言って私に深く頭を下げた。私は緩みそうになる頬をどうにか抑え、 「……大丈夫です、覚悟してましたから。一生……面倒みてくれるんですよね?」  落胆したことを気づかせまいとするように返す。(実際のところ落胆など露ほどもしていない)彼は銀色の長い前髪の奥で少し困ったようなそぶりをみせた。 「……もちろん君のことは」 「この国が補償してくれるんでしょう?」 「あ、ああ。それはもちろん……」 「じゃあいいです。引き続き宮廷魔導師として勤めさせてください」 「ああ……君にそうしてもらえると助かる」  普段無口な彼が動揺していつになく口を開くように、わざと誤解させるような言い回しをした。  だって私は、宮廷魔導師長に恋をしていたから。
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