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初夜:2

 ――な、何……?  小さな痛みに、ファリカの体の震えが大きくなる。歯の根も合わぬほどに体を震わせながら、ファリカは懸命に足を閉じようとした。  けれどどうしても足が閉じられない。  ミハエルの魔力が、無慈悲なくらい力強く、ファリカの四肢を戒めている。 「やめて下さいませ、そんなところ、ダメ……ミハエルさまぁ……ッ……」 「大丈夫、濡れてきた」  ミハエルの指が、じらすようにぬかるみを行き来する。  怯えて引きつっていた薄い襞は、ミハエルの言う通り確かに怪しげな湿り気を湛え始めてた。 「あ、あ……」  指が胎内に沈む度、ファリカの体の奥に熱が溜まってゆく。  その熱の行き場がどこにもないことが、直感的にわかる。  体をねじろうとしてもミハエルに押さえつけられ、手足の自由は戒められている。ファリカはただひたすらに、愛しい王子の責めを受けるしかできない。 「ミハエル様、っ……」 「事前にちゃんと調べた。きっと、これでいいはずだ……もう少し我慢しろ、ファリカ」  ミハエルの声が苦しげにかすれる。ファリカは目をつぶった。  王太子の命令は絶対だ。我慢しなければならないのは分かっている。  だけど……裸で抱き合い、汚れた部分に触れられるなんて、こんなの蛮行過ぎないだろうか。ミハエルはおかしくなってしまったのだろうか。  ファリカの母はずっと前に亡くなった。尚武の気風を尊ぶターレンス家に出入りするのは男性ばかりで、女の子であるファリカに細やかな気遣いをしてくれるような女性もいなかった。4つ年上の兄も当主としての勤めをやり遂げるのに精一杯で、ファリカにいちいち気などつかってはくれない。  だから、男に裸で組み敷かれることがあるなんて、誰も教えてくれなかった。  ファリカの足の付根に、熱を帯びて昂ぶったものが触れる。 「な……に……?」  目を開けて確かめようとしたファリカの頭を、ミハエルが抱え寄せる。 「見ないでくれ、恥ずかしい」 「は、はい、かしこま……り……」  言われたとおりに、ファリカは再び目を閉じた。ミハエルの肩に寄せた鼻先に、彼のまとう爽やかな香りが漂ってくる。  ――ミハエル様に、こんなふうに裸で抱きしめられてしまうなんて……お兄様に知られたら無礼者だと叱られてしまうかも……。  だが、ミハエルにさんざんに弄り回され、濡れた足の間にその昂ぶりを押し付けられては、やはり黙ってはいられない。 「あ、み、ミハエル様、何かが当たっております……お止めくださ……、ん、くっ……」  静止しようとしたファリカの口に、不意にミハエルの指の背が押し込まれた。  中指の第一関節を咥えさせられ、ファリカは目を白黒させる。 「ファリカ、痛かったら僕の指を噛んでいい。お前だけ痛いのも不公平だ」  何をするの? そう尋ねたくても指が邪魔で喋ることが出来ない。体にのしかかるミハエルの肉体が重みを増し、足の間に押し付けられた熱いものがさらに強くファリカの体を押し上げた。  ――え、あっ……嫌、入っちゃう……!  ぬるついた不浄な場所に、ミハエルの体の何処かが入ってしまう。ファリカは強引に指を咥えさせられたまま、声を上げて必死に首を振った。  柔らかな蜜口がひくひくと震えながら、熱い棒状の何かを受け入れた。 「ん、うぅ……っ……ん……っ」  初めのうちは違和感だけだった。だが、熱量がだんだん奥に押し込まれるにつれて違和感が体を裂かれるような痛みへと変わっていった。  ――痛い……!  ミハエルの指に歯を立てぬよう、ファリカは必死に意味のわからぬ状況に耐える。  押し入られる痛みに涙が滲んだ。お腹の奥にまで正体の分からぬ異物を挿入されてしまって、病気になりはしないだろうか。恐ろしくて震えは止まらないし、ミハエルの指を噛みそうで恐れ多くて申し訳ないし、頭が真っ白になってくる。 「ん、う……うぅ……」 「奥まで挿入ったな」  気がつけば、重なりあったミハエルの体はひどく汗ばんでいた。 「動いていいか、ファリカ」  ミハエルが重なりあった体を起こし、ファリカの顔の横に腕をついた。彼の指が口から離れ、ファリカの唇が自由を取り戻す。  ファリカは、目を開けてゆっくりと自分の体を見下ろす。そして、自分とミハエルの体がどんな状況になっているのかを理解した。 「……っ、いやああああっ! 怖いっ、ミハエル様の体が変になってる……ッ!」  人間の体の一部だけこんなに硬くなるわけがない。ファリカは抑えきれない震えにカタカタと歯を鳴らしながら、恐ろしい結合を解こうと虚しく抗った。 「男は皆、こういう風になるんだ」  最近とみにたくましさを増した胸板を上下させながら、ミハエルが低い声で言った。 「お兄様はならないわ! 嫌、いやあ……ッ」 「お前が知らない所では同じようになっている! 大丈夫だから落ち着いてくれ。受け入れてくれ……頼む……」  ミハエルの声が悲しげに曇る。愛しい王子を悲しませたいわけではないのだ。ファリカは必死にこみ上げてくる泣き声を噛み殺す。 「ミ、ミハエル様、わたし……っ……こんなの……知らな……くて……」  あり得ない形状になったミハエルのものを体に受け入れながら、ファリカは懸命に訴えた。 「知らなくていいんだ。お前が知っていたら、僕は落ち込むどころの騒ぎじゃない」  よくわからぬことを言って、ミハエルが再び体を倒してファリカにくちづける。痛いくらい勢いのくちづけに、ファリカは思わず身を捩った。  汗ばんだミハエルの胸をファリカの乳房がこすり上げる。同時に、ファリカの体を貫いていた熱杭がズルリと動いた。 「ン……うぅ……っ」  唇を封じられたまま、ファリカは体をこじ開けられる違和感に抗う。  ミハエルの先端が奥を突き上げるたび、耐え難い痛みが体に走る。  気づくと、両手と両足の戒めは解けていた。痛みと、腹にわだかまる膨大な熱を逃がそうと、ファリカは自分を抱くミハエルの背中にしがみついた。  ミハエルのなめらかな背中は熱く湿り、滴るほどの汗をかいている。 「っ、やあっ、痛い……っ、いたあ……ッ!」 「済まない……ファリカ……」  息を荒げながら、ミハエルが不器用にファリカの体を穿ち続ける。不意にファリカの耳に、ぐちゅぐちゅという水音が届いた。  ミハエルに犯される体の奥から、どろりとした蜜があふれ始める。  繋がっている部分が、ずくんと疼いた。  痛みしか感じかった異様な行為から、ファリカの不慣れな体は、いつしか焦らされるような快感を受け取り始めていた。  狭く引き絞られた内壁をこすられるたびに、ファリカの腰がビクリと浮き上がる。  体の内側をくすぐられているような、表現の難しい感覚に、ファリカの呼吸が甘く乱れ始めた。 「あ、あ……ミハエル様、わたし、なんか、変……」 「変じゃない、世界一、可愛くなっている」  ミハエルの唇が、目尻に滲んだファリカの涙をすくい取る。  熱杭に穿たれるたび、まるでそれを抱きしめるかのように、ファリカの蜜道は引き絞られた。  淫らな水音はますます増し、こわばりきっていたファリカの体が花開くように緩んでゆく。 「ミハエル様ぁ……っ」  痛みと甘い快楽に翻弄されながら、ファリカは恋しい王太子の名を呼んだ。  ファリカの肌が、ミハエルのなめらかな肌にピッタリと吸い付いてゆく。ミハエルと体が一つになってしまうような感覚に、痛みも忘れてファリカは陶然となった。  おぞましく恐ろしかったはずのこの行為が、体の熱を煽りたてていることを不思議に思いながらも、ファリカはすぐそばにあるミハエルの唇に、そっと口づけをした。  ついばむような口づけを繰り返すうちに、気づけばファリカはミハエルと舌先を絡め合い、繋がりを深めるように体を揺っていた。  ああ、さっき舌を入れてきたミハエルは、こんな風にしたかったのだ。そう思いながら、ファリカは厚みのあるミハエルの体をギュッと抱きしめる。  むき出しの乳房をミハエルに押し付けてしまっているけれど、恥ずかしいと思う余裕はもうなかった。 「ファリカ……お前は、僕のものだ……」  うわ言のようにつぶやき、ミハエルが力いっぱいにファリカの体を抱きしめる。  無抵抗な肉体を穿つ熱い杭が、ファリカの体内でじわじわと硬さと熱さを増してゆく。 「っ、ミハエルさまの、あつい……っ……なんで……?」  不浄なはずの場所を得体のしれない蜜でぐっしょりと濡らしながら、ファリカは訴えた。 「ごめん、ファリカ」  ミハエルがかすれた声で言って、体をこわばらせた。驚いてミハエルの腕を掴んだ瞬間、ファリカの体の中に熱い飛沫がほとばしった。 「あ、ああ……な、に……? っ、あ、ああああっ……」  ミハエルを受け止めている身体が、ファリカの意思を無視してひくひくと痙攣する。  胎内に放たれた熱い何かが、彼の熱杭を伝って蜜口から滴り落ちた。  全力で走ったあとのように呼吸を荒げ、ミハエルが自失したファリカの身体をゆっくりと抱きしめる。 「ミハエル様……?」 「お前は僕のものだ、僕はお前のもの……好きだよ、ファリカ」  小さな声で囁かれた言葉が、降り積もる雪のようにファリカの耳に落ちてくる。  何故だろう。幸せだと思うより、気が遠くなる、という気持ちのほうが強いのは。  重みを増した身体に組み敷かれたまま、ファリカはぼんやりと天井を見上げた。  ミハエルの激しい鼓動がファリカの身体に染みこんでくる。こんなに密着して肌を重ねて、まるでミハエルを独占しているようだ。今だけは、この美しい王太子を独占できているのかもしれない……。  ファリカはため息を付き、愛しいミハエルの頬に頭をすり寄せる。  ミハエルの腕が、改めてファリカの体を抱きしめ直す。二人はしばらく体を離さずに、温もりを確かめ合うように抱き合っていた。    ……この十七歳の誕生日の夜から、ファリカは片時も離れず、ミハエルの寝所に侍ることになった。
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