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2-6:逃げられない二度目の夜

 ちょっぴり頭がふわふわする。結構飲んだからしょうがない。  でも、そのおかげで言い訳ができる。酔ってたからうっかり嫌がらせしちゃっただけなのー、ってね。 「言えねーな。ちゃんとしてるときなら言ってもいいけど」 「ほんと?」 「……自分は言わないくせに」 「だって好きな人なんていないもん」  気になってる人だっていない。だからここまで吹っ切れられるのかも。  相手のいる人に憧れはするけど、そのために頑張ろうという気力はわかなかった。どうせ頑張ったってこのかわいげのなさがどうにかなるわけじゃないし。ああ、この開き直った態度がもうすでにかわいくない。 「俺のこと、好きになれば」 「やだ。あんたは社内で嫌いな男ランキング一位なの。気に入らない男ランキングも一位だし、いつか絶対殴るランキングも一位。三冠王だよ」 「そのうち抱かれたい男ランキングにも入れといて」 「最下位でいいなら入れといてあげる」  また、むっとされる。そうやってると子供っぽくてちょっとかわいく見えた。菅原なのに。 「一位にしてほしいの?」 「……まぁ」 「変なの」 「……だな」  なんだか言いにくそうにするのが気になる。  そういえば、好きな相手のことから話がそれてしまった。  改めて聞こうと思ったけど……ちょっと、眠い。  携帯の画面を見てみると、もうここに来てから三時間が経っている。そんなにこいつとたくさん話した記憶はないのに不思議だ。  せっかくなら仕事の話でもしておけばよかったと思ったけど、もう頭に入ってこなさそうだった。  諦めて、目をこする。 「そろそろ帰ろっか。三時間も経ってたって気付いてた?」 「気付いてた。あと一時間粘るつもりだったけどね」 「そんなにいっぱい飲んだら帰れなくなるでしょ」 「だから粘るつもりだったんだよ」  どういう意味かと思った。  そんな私の前に、菅原が鍵を差し出してくる。  ……この、鍵は。 「ちゃんとホテルも取っといたんだけど」 「な……なんで……」 「昨日逃げたこと、ほんとに奢るだけでチャラにすると思ったか?」  嘘でしょ。チャラにすると思ったから来たのに。 「ぜ、絶対やだ。帰る!」 「浅木」  立ち上がりかけた私の腕を菅原が強く掴む。  こんなに離してほしいと思ったのは、こんなにどこかに行ってほしいと思ったのは……初めてかもしれない。  触れた手が熱くて冷めかけた私の頭と身体に火を灯していく。  そのせいで思い出してしまう。昨日のあの、いやらしい時間を。 「菅原、離して……」 「帰らせねーよ」  思わずなにも言えなくなるくらい、強い口調。  私を捕らえたのは腕じゃない。  ……見つめてくる、必死な眼差しだった。
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