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2-5:逃げられない二度目の夜

「……はぁ」  目の前で溜息を吐かれてまたイラっとする。  そのイライラを押さえつけるように、また甘苦いカクテルを喉に流し込んだ。  こいつのこういうところが苦手。なにか言いたそうなのに、言ってこないところ。私を見るだけで諦めたような微妙な顔をする。なんなの。  ……お酒を飲む手が止まらない。カンパリオレンジの次はカルーアミルク。その次はカシスオレンジ。甘い甘いお酒を、この気まずい雰囲気から逃れるように干していく。 「浅木って今、好きな男とかいんの」  やけに真剣な顔で言われて……ぷっと吹き出してしまった。  お前は女子か。 「なに、恋バナ? 悪いけどそういうのは美波だけで充分なの」 「いいじゃん、俺ともしてよ」 「やだ」 「ケチ」 「逆に聞くけど、あんたはどうなの?」 「いるよ」  へぇ。  素直にちょっと驚いた。いるいないというより、あっさり答えたことの方に。  少しはもったいぶるかと思ってたんだけど。 「誰? 美波? だめだよ、菅原にはもったいないから」 「小坂は別に狙ってねーよ」 「えー! 美波のよさがわからないって、目付いてんの?」 「……めんどくさいな、お前」  本当にそう思っているのが伝わってくる。  嫌そうにしているのがなんだか嬉しくて、ふへへとにやけてしまった。 「うちの会社の人間? 同じフロアにいる? 私の知ってる人?」 「なんでノリノリなんだよ」 「あんたの弱みを握れそうだから?」 「やなヤツ」  嫌がってる嫌がってる。もうちょっと攻めたらいろいろ教えてくれないかな? こいつにとって嫌がらせになるのはもちろんだけど、いざというとき騒がしい女子社員への武器になるかも。  女子会のネタにしたっていい。あの菅原がいっちょまえに恋をしてるらしいよ! なんて。 「ふふふ」 「……なんだよ」 「あんたが好きになる人ってどんな人だろーと思って」 「……気になる?」 「うん」 「どうせ言ってもバカにされるから言わねーよ」 「なんでよ、ここまで来たら言ってくれてもいいじゃない」  ほらほら、と煽ってみるけど、菅原は口をつぐんでしまった。  いいところで黙るなんて、ほんとやな性格してる。 「奢ってあげるから教えてよ」 「やだ。……てか、奢るのはもとからだっただろ」 「じゃあー……喋りたくなるまで飲んでいいよ。なに飲む? またビール?」 「もういいって。お前、酔ってるだろ」 「酔ってる相手には言えないのー?」
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