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2-4:逃げられない二度目の夜

「なんで褒めてんのに、バカって言われなきゃならないの」 「知らね」  もう一度、はぁ? と言いそうになったのを堪える。それはあまりにも女子らしくない。……女子、と呼ぶには少々年齢が……うん、だけど。  おしとやかでかわいい女の子はそんなふざけた反応をしないのだ。特に美波のような女の子は。  そこまで考えたけれど、私は私にすぎないわけで。気にするだけきっと時間の無駄だろう。 「お待たせいたしました。生ビールとカンパリオレンジになります」  ちょうど飲み物が運ばれてくる。ついでに小鉢に入ったお通しも。 「それじゃ、乾杯」 「……なんでよりによってあんたと」 「諦めろって。……ほら」  グラスを持った手を無理やり引き寄せられて、強制的に乾杯させられる。  唇を湿らせる程度にカクテルを含むと、ほんのり苦味のあるオレンジが口の中を香った。 「食べたいものあるなら頼めば? 今日は私の奢りなんだし、遠慮なくどうぞ」 「じゃ、メニューのこっからここまで」 「……絶対残さないでよ」 「冗談。……お前、なに食う?」 「別に……なんでもいいけど。人に聞かないで自分の食べたいもの食べなさいよ」 「えー。なら、志津ちゃんが選んで」 「その馴れ馴れしい呼び方ほんとにやめて」  イラっとして一気にカクテルを半分くらい飲んでしまう。 「いい? 昨日……ちょっと、まぁ、あんなことはあったけど、変な勘違いはしないで」 「ふーん、勘違いって?」 「だから……その、馴れ馴れしくしたり、とか」 「あんなこと、ってのをしちゃったんだし、このまま付き合うのはどう?」 「もう酔ったの?」  即答で返すのも仕方ない。  こいつと付き合う? 冗談じゃない。頭を下げてきたって絶対に嫌だ。 「結構本気で言ってるんだけど?」 「はいはい。あんたのそういう冗談、全然笑えないから」 「……あのな」 「他の子にも言ってるんでしょ。私は気にしないけど本気にする子だっているんだし、やめなよ」  こいつがいつも他の子に騒がれているのはよーく知っている。飲み会にだってよく誘われてるみたいだし、休日の予定も虎視眈々と狙われている。断ってるのかどうかは知らなかったけど、まぁこいつのことだし節操なく引き受けてるんじゃないだろうか。  だからいつもいつも人に囲まれてて人気なんだろう。遊びに付き合ってくれるノリのいいイケメン。  ……イケメンなんて、思いたくもない。性格の悪さが顔に滲んでるから。 「他のヤツにこんなこと言えねーよ」 「それならいいんだけど。みんなに迷惑かかるだろうしね」
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