18 / 50

2-2:逃げられない二度目の夜

「それじゃ、また後で。……っていうか、こんな場所でホテルだのなんだの言わないでよ。変態」 「おい」  まだなにかあるわけ?  背を向けようとした私を再び菅原が呼び止めて、一度離した手で腕を掴んでくる。  触らないでほしいのに。あんたの手がなにをしたか、もう思い出したくない。 「金払うんだったら、それで酒でも奢って?」 「自分で勝手に飲めばいいでしょ」 「じゃないと俺、昨日のこと忘れらんないかも」 「あんた……」  目の前で嫌味な顔がにやりと歪む。 「俺の指にあんな感じて、やだやだ言いながらイって。これ以上されたらおかしくなっちゃう……だっけ? あんなの言われたら男冥利に尽きるよな」 「ちょっと!」  意外と声が大きい。とんでもない内容なのに、これでは通りがかった誰かに聞かれてしまうかも。  慌てて口を塞ごうとしたのに、その手を掴まれる。 「どうすんの、志津ちゃん。かわいく啼いてたとこ、覚えてていい?」  こいつ……!  いいわけない。殴って記憶を奪えるなら、今すぐ私はこの男を両手で殴りつけているだろう。 「お酒、奢ったら忘れてくれるんでしょうね……」 「おーおー、ちゃんと忘れてやるよ」 「……わかった。それなら、今度……」 「今夜がいいな」 「明日も仕事なのに? あんたってほんとやなヤツ。余裕がある人は違いますね?」 「そ、お前とは違うの。で、今夜でいいな?」 「……だめって言ってもそうするんでしょ。わかったわよ」 「やったね」 「……あんたなんか大っ嫌い」 「俺は好きだよ、お前のこと」 「うるさい」  どこまでも人の感情を逆撫でしてくる男だ。こんなヤツと話してたら頭がおかしくなりそう。  まだ掴んだままの手を払って、今度こそ背を向ける。  今夜。今夜で全部昨日のことを精算する。  まさかあんなことになるとは思わなかったけど、もう二度とこんな失態は犯さない。  菅原に好きなようにされるなんて、もう。  ……心から本気でそう思っているのに、やっぱり思い出すと身体が熱くなる。  強引で意地悪で、それなのに少しだけ優しくて。  溶けそうなくらい気持ちよくて、全身の力が抜けて……。 「……やだ」  これ以上思い出すな、と自分に向かって告げるようにつぶやく。  そう、私は嫌なの。あいつに翻弄されてしまうのは。  だからもう、あの夜のことは私も忘れる――。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!