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2-1:逃げられない二度目の夜

 そして――。  残念ながら、逃げ出しても次の日がやってきてしまう。  更に言えば、今日は仕事があって出社することになっている。  そんなのは当たり前だ。休日じゃないんだから。  となると、もちろん会社で菅原と顔を合わせる羽目になってしまい……。 「おい、浅木」 「ごめん、今忙しいからまた後でね!」  私は足早に菅原の真横をすり抜け、特に用もない資料室へ向かおうとする。  だけど、それよりも早く菅原は私の肩を掴んだ。  そのままぐるんと振り返させられ、非常に不機嫌そうな顔と対面する羽目になる。 「お前、わかりやすすぎ」 「な、なにが……」  なんのことだかさっぱり。そんな態度でも取らないとやってられない。  昨日のことはまだ私の頭にも、そして悔しいことに身体にも刻み込まれている。  今も触れられているのは肩なのに、その手がなにをしたのか思い出して一気に全身が熱くなった。  触れられ、舐められ、そして……。ああ、もう思い出すのも嫌だ。こんなヤツに好き放題されて、慌てて逃げ出す羽目になったなんて。  だってどう考えてもおかしい。私を抱けないと言ったのは菅原本人のはずなのに、こいつは……。  うろたえる私を強めに引き寄せ、菅原が睨んでくる。 「いい度胸じゃん。人にホテル代まで払わせやがって」 「そ……それは……ごめん。後でちゃんと……払う、から」 「それだけ?」 「それだけって……他になにもないでしょ?」 「最後までしてねーけど」 「ば、バカじゃないの!?」  声が大きくなったのも当たり前だ。まだこいつは昨日の続きをしようと思っているのか。  というか、できると思ってることに驚く。 「昨日のことは……私も忘れるから。あんただって思い出したくないだろうし」 「へぇ、ずいぶん自分勝手だよな。一人でさっさとイったらもう後はどうでもいいって? こっちはこれからってときだったのになー」 「まぁ、あんたも引っ込みつかなくなってたんでしょ、どうせ。あそこで終わってちょうどよかったと思うけど?」 「……お前な」 「ちゃんとお金は渡すから安心して。……もう、逃げるのもやめてあげる」  言い方が偉そうになったのは精一杯の強がり。  私が逃げていたのはこいつから? それとも、昨日の……忘れられない疼きから?  見つめられているだけで心臓が騒ぐのは、なかなか辛いものがある。  恋をしてしまったみたいで悔しい。ただ動揺しているだけなのに、おかしな勘違いをしそうになる。まぁ、心配しなくてもこいつを好きになることだけはありえない。  だって、嫌いだし。
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