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4-9:焦り焦られ前途多難

「へぇ、浅木ちゃんって彼氏いないんだ?」 「そうなんですよねぇ」  お店に入って乾杯を済ませ――。  そのあと、私は非常に順調だった。 「田浦さんも彼女いない歴年齢って言ってましたけど、本当ですか? 全然そんな風には見えませんけど」 「あははっ、そう見えてるなら俺にもチャンスある?」 「んー、もうちょっと考えさせてください」 「焦らすねー!」  今、私が話しているこの人は田浦なんとかさんと言う。  下の名前が思い出せないのは、せっかく親交を深めようとしているのに、遠くから嫌な視線を感じ続けているからだ。  ちらっとそっちの方を見ると、ぱっとそらされる。  もちろん、相手はかのにっくき菅原だった。  よっぽど私に賭けで勝たれたくないらしい。そりゃあまぁ、私みたいな女に負かされるのは気分よくないだろうけど。  だからといって遠慮してやる必要は一切ないし、してあげるつもりもない。  勝負はいつだって全力でいかなければ。 「田浦ぁ、さっきから調子いいじゃん? お前、この間彼女いたくせに」 「あっ、お前。言うなよ!」  横から首を突っ込んできたのは、確か中岡さん。この人も下の名前がなんだったか忘れてしまった。たぶん、こういうところが私のよくないところなのだろう。  わかっているけれど、今更聞くのもなんだか悪い。つまり諦めるしかないのである。 「ってか、なんで中岡までこっち来るんだよ。あの子狙ってるって言ってただろ」 「いや……だってお前、勝ち目ねーだろ」 「あー……」  やっぱり、そうなる?  中岡さんも田浦さんも、見ている先は同じ。そして私とも同じ。  私や、あぶれた一部の女性を除くすべての女性たちにちやほやされ、囲まれているのは当然菅原だった。  たまにこっちをじろじろ見てくる以外は、嘘くさい愛想を振りまいてへらへら笑っている。  あいつがなにか言うたびに大げさなくらい周りが騒ぎ立てる。  なんだかあそこだけお祭りみたいだ、なんて思ったけど言わない。言ってもいいかもしれないけど。
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