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4-8:焦り焦られ前途多難

「……大っ嫌い」 「うん? なにか言った?」 「なんでもない。頑張ろーと思って」  いっつもいっつも、あいつは嫌がらせばっかりしてくる。  他にもっと遊び甲斐のある人なんかごまんといるだろうに、私ばっかり。  他の人と違ってあいつを突っぱねるからいけないのかもしれない。だから面白がって私の嫌がることばっかりするのかも。  一度思いっきり他の人みたいに接してみようか、なんてちょっと考えてみてしまった。  菅原くんって呼んで、あからさまなボディタッチ。  わざとらしい上目遣いをしながら、「今夜空いてる?」って聞いてみるのだ。  そうしたらあいつはどういう顔をするんだろう?  興味を失って、もう関わってこなくなる?  それを思うと、なんだか苦しくなった。  嫌だなって気持ちが溢れて、そんな自分のおかしさに吐き気がする。  本当はちょっとだけあいつとの言い合いが楽しい……のかもしれない。  いやらしいことをされるのは嫌だけど。  そう、嫌なのだ。  私はあいつに馴れ馴れしく触れられて、好き勝手弄ばれて、知らないものを無理やり教えられたくない。  そもそも、好きでもない相手にあんなことを平気でできるなんて軽蔑する。  そう考えて、ぞっとした。  ……あいつは私以外の人にだってあんなことをするし、できるんだってことに気付いたから。  夜、悶々とした気持ちのまま合コンの時間を迎えた。  待ち合わせ場所に向かって、絶句する。 「なん、で……」 「……よう」  なんで菅原がいるの!  大声で言おうとしたけれど、もうすっかり周りは篭絡されている。  ここで菅原をどっかにやって! なんて言おうものなら、排除されるのは私の方だろう。  参加者の男性諸君なら協力してくれる可能性はあった。こんな男がいたら女の子を全員持ち帰られてしまう。  そう考えて、はっと思い至る。  菅原が女の子を全員自分のものにしてくれるなら、そこになびかない私はいわゆる逆ハーレム状態になれるのではと。  気付いた瞬間、私は自然と笑ってしまっていた。 「菅原も来るなんて知らなかった。フリーだって言ってたもんね」 「あー、まぁ、うん」  なんだ、その歯切れの悪い返事は!  突っ込もうと思ったけど今日は堪える。  私が恋人を作るための救世主なのだから。 「お前……さ。今日の昼の……」 「お互い、いい人見つかるといいね!」 「……そうだな」  なにか言いたそうに見えたけど、放っておく。どうせ大したことじゃないし。  今はそれよりも逆ハーレムをどうやって作るかに集中したかった。  もともと私は性格がこれな時点で救いようがない。  キャラを作りすぎても後々別れられちゃ意味がないことを考えると、自然体とそうでないバランスを探る必要がありそうだった。  それを先に菅原で試してみればよかったのかもしれない、なんて考えているうちに、今日のメンバーが全員集まる。  そうしてひとり、またひとりと居酒屋に入っていく。  今から私の意地と未来を賭けた大事な戦いが始まるのだ。
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