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4-6:焦り焦られ前途多難

「なんで怒ってるの……」 「……は?」 「っ!」  顔の真横に菅原の手がついた。  さっきまで以上に驚いて、わざとらしいくらい肩が跳ねてしまう。  恐る恐る見上げると、やっぱり菅原は怒っているようにしか見えなかった。  こいつがそんな顔してるとこ、今まで見たことない。  怖い、と思った。 「……よくわかんないけど、どいて」 「嫌だ」 「じゃあ私がどけるからいい」 「浅木」  顔を背けたのに、顎を掴まれて前を向かされる。  菅原と目が合ってしまった。 「逃げんなよ」 「に、逃げてない」  こんなに狭いエレベーターで逃げ場なんてない。  そんなの、わかっていたのに。 「今夜はまっすぐ帰れ」 「や、やだ」 「言うこと聞けよ」 「なんであんたの言うこと聞かなきゃいけないの!」  この距離も耐えられなくて、菅原の肩を押しのけようとする。  でも、失敗した。  逆に腕を掴まれて、そのままエレベーターの壁に押し付けられる。 「彼氏なんか作らせるかよ」 「や――」  キスされるのかと思いきや、菅原は私の首筋に顔を埋めた。  びっくりしたのも束の間、そこに強い痛みが走る。 「ばっ、ばか、痕付けないで……!」 「うるせ」 「見えちゃうから……っ」  せめて、もっと見えない場所ならよかった。  でも菅原はわざと服で隠せない場所を狙ってくる。  押さえ込まれている以上、私にはどうすることもできなくて。 「……っ……あ……っあ……んんっ……」  意地悪な行為のはずなのに、だんだん気持ちよくなってきてしまう。 「首弱いもんな、お前」 「やだ……やぁっ……」  抵抗できてないな、なんて自分が一番わかってる。  菅原に触れられるのは久しぶりで……身体が、この甘さを求めていた。 「なに、感じすぎじゃね?」 「う、うるさい……」 「そういうのもさ、俺にだけ見せてればいいじゃん。なんで他に男作んの」  ちゅっとまた強めに肌を吸われて足に力が入らなくなる。  いつの間にか解放されていた手は、菅原の肩を掴んでいた。  倒れ込んでしまわないようすがって、その背中に滑らせる。  私が抱き締めると、菅原が少しだけ笑った。 「お前、俺にされただけでそうなるくせに、恋人できたらどうするんだよ」 「あんたにされるからこうなるんでしょ……!」 「……ばか」  顎をすくい取られて、今度は唇にキスされる。  すぐに潜り込んできた舌が、私の口の中をざらっと舐めた。
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