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4-4:焦り焦られ前途多難

「絶対やだ」 「……頑張ってもどうせできねーよ」 「そんなことないし」  見下ろした菅原と視線が交差する。  ばちっと火花が散ったような気がした。 「そこまで言うなら、今週中に恋人作ってやるんだから!」 「……は? いや、なんでそうなる――」 「一週間後を楽しみにしてなさい。ばーかばーか!」  捨て台詞を吐いて今度こそ菅原の前を立ち去る。  今に見てろ、と唇を噛み締めた。  私だって恋人の一人や二人、この年なんだからすぐ作れるに決まってる。  今は世の中に合コンやら婚活パーティーやら溢れてるしね。  でも、もし本当に恋人ができたら私は今度こそ菅原とはしなかった先まで進むことになる。  ……相手が菅原じゃないのはなんだかおかしいな、とちょっとだけ思った。  それから三日が経った。  そんなにすぐ恋人はできないということを、今、身を持って思い知っている。 「どーしよ……」 「また菅原くんと喧嘩した?」 「またってなに、またって」 「だってこの間から菅原くん、なんか不機嫌そうじゃない?」  美波に言われて菅原のデスクに目を向ける。  唇を尖らせた菅原は、あからさまに「僕、怒ってます!」って顔をしていた。  わかりやすすぎてむしろ笑えてきてしまう。 「仕事が忙しかったって言ってたし、その処理で忙しいんじゃないの?」 「そうかなぁ」  そもそもあいつが不機嫌になる理由がわからない。  もし美波の言うように私とのやり取りが原因だとしたら、それは恋人を作る云々の話のことだろう。  だけど菅原にとっては私に恋人ができない方が嬉しいはずだ。  あんなに強気に言ったくせに結局だめだったのかー、なんて笑うネタがひとつできるんだから。 「あ、そうだ。美波、合コンのお誘いとかない?」 「え、どうしたの、急に」 「今週中に彼氏作るの」 「……あー、なるほど」  うんうん、と美波が頷く。 「それ、菅原くんに言ったでしょ」 「だってあいつが、お前に恋人なんかできるわけないだろーって言うんだもん」 「失礼だなぁ。私が男だったら志津のこと、見逃さないのに」 「見る目あるぅ。さっすが美波!」 「……見る目だけは、あるんだよねぇ」  なぜかしみじみ言いながら美波は遠い目をする。  まるで孫の話を聞くおばあちゃんかなにかだ。 「そういうことなら、聞いてみよっか? 週末なら誰かしら合コン開いてるかも」 「ほんと? ありがと!」 「……楽しくなりそうだなぁ」  ふふふと美波が小悪魔めいた笑みを漏らす。  そんな悪どい顔ですらかわいく見えるのだから、神様は本当にずるい。  私にも爪ひとかけら分だけこのかわいさとあざとさがあれば、と思うけれど、まあ願ってもどうしようもないことだ。
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